米早期テーパリング観測を背景にドル高基調は続く見通し
〇今週のドル円週央にかけて110.42まで下落後、雇用統計前に約1年3ヵ月ぶり高値となる111.66まで急伸
〇米経済指標の好調、FRB関係者から相次いだタカ派発言が背景
〇米雇用統計はNFPは好調なるも、他項目は悪化するまちまちな内容、ドル円は111.06まで反落し越週
〇ユーロドル週明け早々に1.1946に上昇するも米金利上昇やECB関係者のハト派発言で一時1.1808に急落
〇ドル円テクニカルには地合い強く、週末雇用統計後の下落はポジション調整か
〇ファンダメンタルズも米景気回復期待と早期テーパリングに向けた動き等ドル円をサポート
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想、週明け米休場で三連休明けはドル買い再開か
〇来週の予想レンジ(USDJPY):110.00ー112.50、(EURUSD):1.1725−1.1975
今週のレビュー(6/28−7/2)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初110.75で寄り付いた後、@前週末金曜日に発表された米5月PCEデフレータが市場予想を下回ったことに伴うインフレ懸念の後退や、A上記@を背景とした米長期金利の低下圧力(米早期テーパリング観測後退→米10年債利回りが1.54%から1.43%へ急低下)、B本邦輸出筋による四半期末を控えたドル売り圧力、C貴金属市場の下落を背景としたリスク回避の円買い圧力(資源国通貨の対円相場下落→ドル円連れ安)が重石となり、週央にかけて、週間安値110.42まで下落しました。しかし、一目均衡表転換線をバックに続落が阻まれると、D米6月ADP雇用統計の力強い結果や、E米5月住宅販売保留指数の良好な数字、F四半期末ロンドンフィキシングに向けてのドル買い圧力、
G堅調な米主要株価指数や原油先物価格を背景としたリスク選好の円売り圧力、H米当局者による相次ぐタカ派的な発言(リッチモンド連銀バーキン総裁による「状況が整った場合に利上げを実施できるよう準備したい」との発言や、ダラス連銀カプラン総裁による「FRBは年末まで待たず早めにテーパリングすることが望ましい」との発言、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁による「年内のテーパリング開始を支持する」との発言など)、I直近高値突破に伴う短期筋のロスカット、J米新規失業保険申請件数の良好な結果、K米下院による7150億ドル規模のインフラ投資計画法案の可決報道が支援材料となり、週末にかけて、約1年3ヵ月ぶり高値となる111.66まで急伸しました。もっとも、その後は、L米6月雇用統計で平均時給が市場予想を下回ったこと、M上記Lを背景に米早期テーパリング観測が幾分後退したこと、N米3連休を前にポジション調整圧力が強まったこと等が重石となり、結局111.06近辺まで値を崩しての越週となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1935で寄り付いた後、早々に週間高値1.1946まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線をバックに伸び悩むと、@欧米金融政策格差を背景としたユーロ売り・ドル買い圧力や、AパネッタECB専務理事による「ECBは政策措置をすぐに縮小すべきでなく、PEPPの異例な柔軟性を維持すべき」との慎重な発言、Bオーストリア中銀ホルツマン総裁による「インフレが弱いため利上げの余地はない」とのハト派的な発言、Cメルケル独首相による「欧州の完全回復までにはまだ長い道のりがある」との悲観的な発言、D米経済指標の良好な結果(米早期テーパリング観測再燃→米ドル高)、
E欧州圏における新型コロナウイルス変異株(デルタ株)の感染拡大懸念(フランス政府は南西部ランド地方の制限措置を7/6まで延期することを決定)、F月末ロンドンフィキシングに絡むドル買いフロー、GラガルドECB総裁による「変異株の蔓延で欧州圏は景気回復の観点で不確実性に直面している」との悲観的な発言が重石となり、週末にかけて、4/6以来、約3ヵ月ぶり安値となる1.1808まで下落しました。もっとも、その後は、Hドイツ連銀バイトマン総裁によるタカ派的な発言(ECBはインフレの上振れを容認すべきでない)や、I米雇用統計後のドル売り圧力が支援材料となる中、結局1.1865近辺まで持ち直しての越週となっております。
来週の見通し(7/5−7/9)
<ドル円相場>
ドル円相場は4/23に記録した直近安値107.47をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、昨年3/25以来、約1年3ヵ月ぶり高値となる111.66まで急伸しました。強い買いシグナルを示唆する三役好転(転換線の基準線上抜け・遅行線の26日前のローソク足上抜け、ローソク足の雲上限上抜けが全て揃う状態)や、移動平均線のパーフェクトオーダー(上から順番に短期線・中期線・長期線が並ぶ状態)、ダウ理論における上昇トレンド(高値と安値の同時切り上げ)が全て成立する中、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます(米雇用統計後に反落に転じるも、上昇トレンドの中で見られる一時的なポジション調整と整理)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米の金融政策格差を背景としたドル買い・円売り圧力(金融緩和の長期化が見込まれる日本と、金融緩和からの早期脱却が意識される米国との金融政策格差)や、A上記@を背景とした過剰流動性相場逆流への警戒感(金融市場の不安定化が資産現金化需要のドル買いを引き起こす恐れ)、B米経済の回復期待、C米当局者による相次ぐタカ派的な発言など、ドル円相場の上昇を想起させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。来週は7/5が独立記念日で米国休場となる為、週明けは動意に欠ける展開でのスタートが見込まれますが、7/6に予定されている米ISM非製造業景況指数が市場予想を上回る結果を示す場合や、7/7のFOMC議事要旨でタカ派的なスタンスが示される場合などには、米早期テーパリング観測を再び織り込む形で、米長期金利上昇→米ドル高の流れが再開すると予測されるため、来週も引き続きアップサイドリスクに注意が必要な1週間となるでしょう(米雇用統計後の下落は平均時給の内容というよりも、米3連休前のポジション調整が主因と整理。来週は再びドル高基調が復活し、昨年3月に記録した直近高値111.72を試すシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(USDJPY):110.00ー112.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/25に記録した直近高値1.2267をトップに反落に転じると、今週末にかけて、一時1.1808(4/6以来、約3ヵ月ぶり安値圏)まで下落しました。強い売りシグナルを示唆する三役逆転(転換線の基準線下抜け・遅行線の26日前のローソク足下抜け・ローソク足の雲下限下抜けが全て揃う状態)や、移動平均線のデッドクロス(短期線が中期線と長期線を同時に下抜ける状態)が成立する中、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@欧米の金融政策格差(ハト派なスタンスが繰り返し述べられる欧州と、早期テーパリングが意識される米国との金融政策格差)を背景としたユーロ売り・ドル買い圧力や、A上記@を背景とした過剰流動性相場逆流への警戒感(金融市場の不安定化が資産現金化需要のドル買いを引き起こす恐れ)、B欧州圏における新型コロナウイルスの感染再拡大懸念、CECB当局者による相次ぐハト派的な発言など、ユーロドルの下落を意識させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。来週は7/6に予定されているドイツ5月製造業受注や、ドイツ7月ZEW景況感指数、7/7のドイツ5月鉱工業生産などに注目が集まります。市場予想を下回る結果となれば、ECBによる金融緩和長期化観測の高まりを通じて、ユーロ売りの流れが再開すると見られることから、来週もダウンサイドリスクに注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1725−1.1975
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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