ドル円 年初来高値更新するも上昇は鈍い流れ(週報6月第4週)

年初来高値を上抜けたことからテクニカルなドル買いが入り、木曜には高値を111.12レベルとしました。

ドル円 年初来高値更新するも上昇は鈍い流れ(週報6月第4週)

年初来高値更新するも上昇は鈍い流れ

〇先週のドル円、年初来高値を上抜け木曜に111.12レベルをつける、週後半は動意薄で限定的な値動き
〇月末月初を控え、今週の日銀短観・米国雇用統計を前に積極的な新値追いがしづらい状況だったか
〇先週の高値圏は平行上昇チャンネルの上限に近く、ドル高トレンドは中期的に継続しやすいか
〇米金利とドル円の動きの相関、米国経済指標発表直後の動きにも注目
〇今週は月末月初、ロンドン・フィキシング、主要国の経済指標など材料には事欠かない一週間
〇今週は110.10レベルをサポートに、111.40レベルをレジスタンスとする流れ


今週の週間見通し

先週のドル円は週初に株式市場が大きく下げた後に行って来いと底堅い展開となっている中で、年初来高値を上抜けたことからテクニカルなドル買いが入り、木曜には高値を111.12レベルとしました。しかし年初来高値更新の達成感も出て、利食い売りに押される中で111円台ではドル売りオーダーが見えたことから、上値が重たい感じでの引けとなりました。

週後半は上値が重たいながらも動意薄で上下ともに限定的な値動きとなりましたが、月末月初を控えていることや、今週の日銀短観や米国雇用統計を前に積極的には新値追いがしづらかったという市場参加者が多かったように思えます。ただ、日銀短観は米国雇用統計前日の発表のため、方向感が出るほどの動きにはならないでしょう。

そして米国雇用統計はここ2か月ほど比較的よく動いています。今回の雇用統計では失業率がやや低下し5.7%、またNFPは67.5万と前回より増加が予想されていますが、NFPについては前月の修正を含めると、結構変動も大きくまた予想範囲も+50万〜100万とかなり幅もあり、これだけを材料には動きにくいと言えます。平均時給等他の項目を見て総合的に判断をする必要があるでしょう。

また、コラムで書いたように最近は米金利とドル円の動きの相関が中期的には負の相関になっています。まさに金曜がそうですが、前日比では米金利が上昇する中でドル円は下げました。ただ、ザラ場ベース、特に米国経済指標発表直後は相関が以前に戻り一時的に米金利と同じ動きをするため、その点も併せて見ておきたいところです。

他にも月末月初で、月末のロンドン・フィキシング、主要国の経済指標や中銀関係者の講演など材料には事欠かない一週間です。そうした時にはテクニカルの方が参考になりますのでチャートを見ていきましょう。まず週足です。

今週の週間見通し

週足では年初来高値を更新したものの足取りが鈍い理由として、昨年コロナショック前後の高値が111.71(ショック後、青)と112.22(ショック前、赤)と112円前後に集中していることを確認するだけで十分ですが、こうした需要なポイントはレジスタンスではあるもののターゲットとして吸い寄せられていくことも多いため、今週の材料がそのきっかけとなるかどうか見ておきましょう。

そしていつもの日足チャートもご覧ください。

こちらのチャートでは4月安値からの平行上昇チャンネルが現在のトレンドを形成していると見られ、先週の高値圏はかなり上限に近かったと見ることができます。しかしこの上限は今後も上がっていくことを考えると、明確に下に抜けるまでは現在のドル高トレンドは中期的に継続しやすいチャートであると言えます。

現在このチャンネルは109円台後半と111円台半ばに位置していますが、下側は大台110円がその手前でサポートになりやすいでしょう。上値は先週高値を抜けるには何かきっかけが必要ですが、上抜けた場合には日足チャートで見た水準へと近づいていくこととなります。

ただ、今週のところは先週高値を上抜けてもチャンネル上限で上値を抑えられると見ていますので、今週は大台手前110.10レベルをサポートに、111.40レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の週間見通し 2枚目の画像

ドル円(日足)チャート


このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月28日(月)
08:50 日銀会合主な意見公表
15:00 ドイツ5月輸入物価
17:00 南ア4〜6月期消費者信頼感
21:00 ドイツ連銀総裁講演
24:00 デギンドスECB副総裁講演
25:00 リッチモンド連銀総裁講演

6月29日(火)
08:30 本邦5月失業率・有効求人倍率
15:00 英国6月住宅価格
15:45 フランス6月消費者信頼感
18:00 ユーロ圏6月消費者信頼感
21:00 ドイツ6月CPI速報値
22:00 米国4月住宅価格
22:00 米国4月ケースシラー住宅価格
22:00 リッチモンド連銀総裁講演
23:00 米国6月消費者信頼感
24:45 フランス中銀総裁講演

6月30日(水)
08:15 豪中銀総裁講演
10:00 中国6月製造業PMI
15:00 英国1〜3月期GDP改定値
15:45 フランス6月CPI速報値
15:45 フランス5月PPI
16:00 トルコ5月貿易収支
16:55 ドイツ6月失業率
18:00 ユーロ圏6月CPI速報値
21:00 南ア5月貿易収支
21:15 米国6月ADP全国雇用者数
22:45 米国6月シカゴ購買部協会景況指数
23:00 米国5月住宅販売保留件数
23:30 週間原油在庫統計

7月1日(木)
**:** 香港市場休場
07:45 NZ住宅建設許可件数
08:50 日銀短観
10:30 豪州5月貿易収支
10:45 中国6月MarkIt製造業PMI
15:00 ドイツ5月小売売上高
16:00 トルコ6月製造業PMI
16:50 フランス6月製造業PMI
16:55 ドイツ6月製造業PMI
17:00 ユーロ圏6月製造業PMI
17:30 英国6月製造業PMI
18:00 ユーロ圏5月失業率
18:00 英中銀総裁講演
20:30 米国6月チャレンジャー人員削減数
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:45 米国6月製造業PMI
23:00 米国6月ISM製造業景況指数
23:00 米国5月建設支出

7月2日(金)
18:00 ユーロ圏5月PPI
21:30 米国6月雇用統計
21:30 米国5月貿易収支
21:30 ラガルドECB総裁講演
23:00 米国5月製造業新規受注

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月21日(月)
 前週金曜海外市場の株安の動きを受け日経平均株価が1000円を超える下げを見せる中、ドル円もリスクオフの円買いのとなり東京昼過ぎには109.72レベルの安値をつけました。欧州市場に移りダウ先物が上昇に転じ大きく上昇、ダウ先物は金曜高値を上抜け日経平均先物も夜間取引で上昇したことから、ドル円は110.35レベルまで上昇し高値圏での引けとなりました。

6月22日(火)
 ドル円は前日海外市場の流れを継続しドルじり高の地合いからスタート。その後NY市場に入ってからは強い経済指標も重なって一段高となりましたが、高値110.79レベルとFOMC後の高値を抜けられず引けにかけてはやや売られて引けました。

6月23日(水)
 ドル円はドル高円安の流れを続け仲値すぎにはFOMC後の高値を上抜け、欧州市場昼前には一時111.11レベルとコロナショック以来のドル高値をつけました。しかし、111円台では売りも出たことと年初来高値更新の達成感もあり直後には110.66レベルまで反落、その後は111円近くに戻しての引けとなりました。

6月24日(木)
 ドル円は東京朝方に111.12レベルの高値をつけて以降は緩やかな調整が続きNY市場前場には110.69レベルの安値をつけました。その後、バイデン政権によるインフラ投資計画が減額して合意との報道から米国株が上昇した動きを受け、ドル円もやや買い戻されましたが110.91レベルを戻り高値に111円台では売りが見えての引けとなりました。

6月25日(金)
 ドル円は111円台でドル売りオーダーが見えたこともあって、週末を前にしてNY市場まで上値が重たい展開が続きました。NY市場に入り発表された個人消費が前月比で予想よりも弱かったことから110.48レベルの安値をつけましたが、前年比では予想通りで米金利が上昇したことから、ドル円もNY市場朝方の水準へと戻した後は鈍い動きのまま引けました。


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