ドル円見通し 111円台到達で高値への攻めぎ合い、80週サイクルの上昇限界に挑戦
〇ドル円先週一時111.11まで上昇するも米PCEコア指数伸びず110円台半ばに反落
〇しかしコア指数前年比3.4%は絶対水準としては高く、その後持ち直し110円台後半に戻す
〇前週のFOMCタカ派サプライズ後の株安ドル高幾分落ち着きナスダックは史上最高値更新
〇ドル円6/7以降の上昇基調維持、110円台序盤は押し目買いされやすいか
〇110.47を割り込まないうちは反騰入りの可能性111.11超えからは111.30前後への上昇へ
〇110.47割れからは110円台序盤試しへ、110.50以下の水準が続く場合下値を試しやすい
【概況】
ドル円は6月24日午前高値で111.11円へ上昇、23日夜高値111.10円をわずかに上抜いて4月23日以降の高値を更新したが、その後は上値が重くなり25日夜には110.47円まで一時反落した。米個人消費支出物価指数が予想程には伸びなかったことで一時的にドル安、米長期債利回り低下となったところを反映したが、その流れは長続きせずにドル高、米長期債利回り上昇へと持ち直したことでドル円も26日未明には110.87円まで戻している。
米商務省が発表した5月の個人消費支出(PCE)物価指数上昇率は前年同月比3.9%となり、4月の3.6%を上回り2008年8月の4.0%以来12年9か月ぶりの高水準となった。食品とエネルギーを除いたコア指数の上昇率も3.4%で1992年4月の3.4%以来29年ぶりの伸びとなった。しかしコア指数の前月比は0.5%上昇にとどまり市場予想の0.6%を下回り、4月の0.7%からは低下したため市場はいったんドル売り反応を見せた。しかし今後の伸びが鈍化する可能性を示唆するものの依然とし米連銀の物価目標である2%を大幅に上回る上ブレ状態が続く可能性が警戒されて早々にドル高へ回帰したと思われる。
6月17日未明の米FOMCが利上げ開始時期の予想を前倒しして量的緩和縮小議論を開始するという姿勢を示したことが市場にとってはサプライズとなってドル全面高、利上げ時期に敏感な2年債や5年債利回りが急伸してNYダウが大幅下落したが、6月21日以降はダウが持ち直しに入りナスダック総合指数が史上最高値更新へ反騰したことで為替市場も落ち着きを取り戻してドル安へ進み始めている。しかしユーロドルの戻りは鈍くFOMC後の急落に対する半値戻しに届かず、ポンドドルはいったん半値戻しを超えたものの24日夜から25日夜へと失速するなどドル全面安へ勢い付く状況には至っていない。
【6月7日以降の上昇チャンネル】
ドル円は株高によるリスク選好感と、FOMC後のクロス円全般の上昇に支えられているために6月7日以降の上昇基調は維持している。
6月3日の米ADP民間雇用報告が予想を大幅に超えたことでドル全面高となった局面で6月4日午前高値110.33円を付け、6月4日の米5月雇用統計が期待外れだったことで6月7日夜安値109.17円まで1.14円の下げ幅で急落した。その後の持ち直しで17日午前にはFOMC後のドル高を受けて110.81円まで上昇したが、株安を気にして6月21日安値109.70円まで1.11円の下げ幅で失速したが、6月7日への下落時に近い規模にとどまって底上げをして6月23日に高値を更新、111円台へと到達したところで上昇一服から25日夜に小反落したという状況だ。
6月4日午前高値と6月17日午前高値、6月24日午前高値はほぼ1直線であり、6月7日より安値から6月21日安値を結ぶラインも概ね1直線となり上昇チャンネルを形成している。
6月21日安値から6月24日への上昇幅1.41円に対する半値押しラインが110.40円にあり、6月25日安値はその手前で下げ止まって反騰入りしているので、このまま高値更新へ進めば上昇チャンネルの高値ラインの来る111.20円から111.30円前後を目指す可能性が高まるとみるが、半値押しラインを割り込む場合は3分の2押しとなる110.08円、上昇チャンネルの支持線が来る110円前後を試す流れへ進みやすくなる。ただし、今のところは上昇チャンネルの継続とみて110円台序盤は押し目買いされやすいところと考える。
【80週サイクルによる上昇期の限界に挑戦】
ドル円の1月6日安値からの反騰は、概ね80週前後の底打ちサイクルにおける底打ち反騰と思われる。このサイクルの底は2016年6月24日底、2018年3月26日底、2019年8月26日底、2021年1月6日底と繰り返してきた。このサイクルと天井は2016年12月15日高値、2018年10月4日高値、2020年2月20日高値である。
2014年以降、このサイクルにおける上昇期は2014年12月16日からの25週、2016年6月24日からの26週、2018年3月26日からの28週、2019年8月26日からの26週というように、概ね半年で一巡してきた。今回は1月6日安値から6月24日高値までが25週を経過したところであり、ここ数年繰り返してきた26週前後の上昇限界を超えられるのかどうかを試す局面と思われる。
日足においては3月31日高値110.96円を若干超えたところにあってダブルトップに終わるのか、ダブルトップ破りから上昇が勢い付くのかを試されるところにあり、もう1〜3週の上昇なら2020年2月天井112.21円等を超えてゆく可能性もあるところだ。
ただし、4月23日安値以降の上昇期における調整安の下げ幅は5月7日への1.37円、5月25日への1.23円、6月7日への1.16円、6月21日への1.11円であり、1円強の調整安は上昇トレンドの範囲となるものの1.50円を超える規模の下落となる場合は4月23日以降の調整安レベルを超える下げとなり、6月7日以降の上昇チャンネルからの転落でもあり、日足相対力指数としても3月31日高値形成時と比較して指数のピークが切り下がる弱気逆行型となり下落暗示に入るため、80週サイクルレベルの上昇期の一巡による下落期入りとなる可能性も警戒すべきという状況に陥るのではないかと考える。
【当面のポイント】
(1)当初、6月25日夜安値110.47円を下値支持線、6月24日午前高値111.11円を上値抵抗線とする。
(2)6月25日夜安値を割り込まないうちは反騰入りの可能性を優先し、111.11円超えからは111.30円前後への上昇を想定する。111.30円以上は反落注意とするが、111円到達後も110.75円を上回る水準での推移なら上昇基調を継続しやすいとみる。7月2日の米雇用統計反応次第では111円台後半(111.50円から112円)へ向かう可能性もあるとみる。
(3)110.47円割れからは110円台序盤(110.25円から110.00円)を試すとみる。110.25円以下は反発注意圏とみるが、110.47円を割り込んだ後も110.50円以下での推移が続く場合は安値試しを続けやすい状況とみる。また下げ足が速まる場合は6月21日安値109.70円から109.50円前後を試す可能性もあるとみるが、その際は3月31日高値とのダブルトップ形成による下落期入り及び80週サイクルにおける半年レベルの上昇一巡による下落期入りの可能性も警戒する。(了)<27日15:00執筆>
ドル円週足
【当面の主な予定】
6/28(月)
15:00 (独) 5月 輸入物価指数 前月比 (4月 1.4%、予想 1.3%)
15:00 (独) 5月 輸入物価指数 前年同月比 (4月 10.3%、予想 11.4%)
21:00 (英) ホールデン英中銀委員、講演
21:00 (独) バイトマン独連銀総裁、講演
22:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、国際決済銀行主催パネル討論会参加
24:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
24:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
6/29(火)
G20外相会合
ブリュッセル・エコノミック・フォーラム、メルケル独首相、ラガルドECB総裁等参加
OPECプラス共同技術委員会
08:30 (日) 5月 失業率 (4月 2.8%、予想 2.9%)
08:30 (日) 5月 有効求人倍率 (4月 1.09、予想 1.08)
08:50 (日) 5月 小売業販売額 前年同月比 (4月 12.0%、予想 7.9%)
18:00 (欧) 6月 消費者信頼感・確定値 (速報 -3.3)
18:00 (欧) 6月 経済信頼感 (5月 114.5、予想 116.5)
21:00 (独) 6月 消費者物価指数速報値 前月比 (5月 0.5%、予想 0.4%)
21:00 (独) 6月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (5月 2.5%、予想 2.4%)
22:00 (米) 4月 米連邦住宅金融局(FHFA) 住宅価格指数 前月比 (3月 1.4%、予想 1.6%)
22:00 (米) 4月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (3月 13.3%、予想 14.7%)
22:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、討論会参加
23:00 (米) 6月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (5月 117.2、予想 119.0)
24:45 (欧) ヴィルロワ・ド・ガロー仏中銀総裁、講演
25:00 (英) ハウザーハウザー英中銀理事、講演
25:00 (独) バイトマン独連銀総裁、講演
6/30(水)
08:15 (豪) ロウ豪中銀総裁、パネル討論会
08:50 (日) 5月 鉱工業生産速報値 前月比 (4月 2.9%、予想 -2.0%)
08:50 (日) 5月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (4月 15.8%、予想 27.0%)
10:00 (中) 6月 国家統計局製造業PMI (5月 51.0、予想 50.8)
10:30 (豪) 5月 民間部門信用残 前月比 (4月 0.2%)
14:00 (日) 5月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (4月 7.1%、予想 8.4%)
14:00 (日) 6月 消費者態度指数・一般世帯 (5月 34.1、予想 35.5)
15:00 (英) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 -1.5%、予想 -1.5%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 -6.1%、予想 -6.1%)
15:00 (英) 1-3月期 経常収支 (10-12月 -263億ポンド、予想 -145億ポンド)
16:55 (独) 6月 失業者数 前月比 (5月 -1.50万人、予想 -2.00万人)
16:55 (独) 6月 失業率 (5月 6.0%、予想 5.9%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (5月 2.0%、予想 1.9%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (5月 1.0%、予想 0.9%)
20:00 (英) ホールデン英中銀委員、講演
21:15 (米) 6月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (5月 97.8万人、予想 55.0万人)
22:45 (米) 6月 シカゴ購買部協会景況指数 (5月 75.2、予想 70.0)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前月比 (4月 -4.4%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前年同月比 (4月 53.5%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
7/1(木)
休場、香港、カナダ
OPEC総会、OPECプラス閣僚級会合
07:30 (豪) 6月 AiG製造業指数 (5月 61.8)
07:45 (NZ) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 4.8%)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (1-3月 5、予想 16)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業先行き (1-3月 4、予想 18)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (1-3月 -1、予想 3)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (1-3月 -1、予想 8)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (1-3月 3.0%、予想 7.2%)
10:30 (豪) 5月 貿易収支 (4月 80.28億豪ドル)
10:45 (中) 6月 財新製造業PMI (5月 52.0、予想 52.1)
16:55 (独) 6月 製造業PMI改定値 (速報 64.9)
17:00 (欧) 6月 製造業PMI改定値 (速報 63.1)
17:30 (英) 6月 製造業PMI改定値 (速報 64.2)
18:00 (欧) 5月 失業率 (4月 8.0%)
18:00 (英) ベイリー英中銀総裁、基調講演
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 41.1万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 339.0万人
22:45 (米) 6月 製造業PMI改定値 (速報 62.6)
23:00 (米) 6月 ISM製造業景況指数 (5月 61.2、予想 61.0)
23:00 (米) 5月 建設支出 前月比 (4月 0.2%、予想 0.5%)
7/2(金)
08:50 (日) 6月 マネタリーベース 前年同月比 (5月 22.4%)
10:30 (豪) 5月 住宅ローン新規申請件数 前月比 (4月 4.3%)
18:00 (欧) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 1.0%)
18:00 (欧) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 7.6%)
21:30 (欧) ラガルドECB総裁、パネスディスカッション
21:30 (米) 5月 貿易収支 (4月 -689億ドル、予想 -709億ドル)
21:30 (米) 6月 非農業部門就業者数 前月比 (5月 55.9万人、予想 69.5万人)
21:30 (米) 6月 失業率 (5月 5.8%、予想 5.7%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前月比 (5月 0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前年同月比 (5月 2.0%、予想 3.6%)
23:00 (米) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 -0.6%、予想 1.3%)
オーダー/ポジション状況
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2024.11.22
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東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
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2024.11.22
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2021.06.28
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2021.06.26
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ドル円は4/23に記録した安値107.47をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、3/26以来、約1年3ヵ月ぶり高値となる111.12まで急伸しました
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