ドル円 110円の大台を挟んで若干上値の重たい展開(週報6月第3週)

結局は金利もドル円もピークは翌朝で見て、そこからの反転の方がインパクトが大きいものとなりました。

ドル円 110円の大台を挟んで若干上値の重たい展開(週報6月第3週)

110円の大台を挟んで若干上値の重たい展開

〇先週のドル円、FOMCの結果がタカ派であったことから、米金利上昇とともにドル買いの動きとなる
〇しかしドル円は金曜東京後場に109.94レベルまで下げ、米金利は金曜NY後場に3/3以来の水準まで低下
〇市場参加者の過剰反応による米金利上昇、ドル高であった可能性
〇引き続きFRBのスタンス変化に注目、8月下旬のジャクソンホールは更に注目度が高くなったか
〇テクニカルでは大きくは緩やかなドル高円安の動きの中で、短期的には調整のドル売りという見方
〇今週は109.50レベルをサポートに、110.50レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週のドル円は米国FOMCに向けて前週の流れを受けドルが若干強い流れでの発表待ちとなりました。結果は現状維持であったものの注目されていたドットチャートにおいて2023年までの利上げを予測する参加者が前回3月会合から倍増の13人となり、2022年まででも倍増の7人と市場参加者が思っていた以上にタカ派となっていたことから、米金利上昇とともにドル買いの動きとなりました。

翌日の東京前場には10年債利回りが1.594%とFOMC前の1.484%から0.11%の上昇となりドル円も高値110.82レベルとドル高となりましたが、結局は金利もドル円もピークは翌朝で見て、そこからの反転の方がインパクトが大きいものとなりました。ドル円は金曜東京後場には109.94レベルまで水準を切り下げ、米金利に至っては金曜NY後場には1.43%台と更に水準を下げ3月3日以来の水準にまで低下しました。

このFOMC前後の動きを分析すると、市場参加者の多くがドットチャートに注目し前回3月ドットチャートよりも利上げは前倒しになりそうだという見方がコンセンサスとなっていましたが、蓋を開けて見るとコンセンサス以上にタカ派な分布となっていたことで米金利上昇、ドル高というのが最初の動きでした。

しかし、翌日のNY前場には米金利はFOMC前の水準となり、週末に向けては3月3日以来の低金利となったことについて以下のような見方をすることが出来るでしょう。一言で言ってしまえば、市場参加者がはしゃぎすぎて過剰反応したところに、パウエルFRB議長が会見でFRBとして考えていることを市場に伝えたところ、その文言から判断するに市場参加者はFOMCの結果をミスリードしたというものです。

FOMC後の会見でパウエルFRB議長が話したことを簡単にまとめると以下の通りです。
・ドットチャートは将来の利上げの有無を予測するためのツールとしてふさわしくない
・利上げは議論の中心ではなく資産買い取り(テーパリング)のほうが重要である
・しかし今はテーパリングではなく経済状況のデータをより多く見る段階にある
・テーパリングの発表前に市場に伝える

こうして見ると、明らかに市場の過剰反応に対して冷やしている発言から始まり、現時点では今までと特にスタンスに変化は無く、今後変化が出そうな時には予め何らかの説明をパウエルFRB議長自らが伝えるとしていると解釈できます。おそらくは、この解釈で間違いないと思います。

ただ長期的にはテーパリングがまず始まり、利上げも2022年後半から2023年にかけてありそうという見通しは出来ますので、今後パウエル議長が市場にシグナルを送るのはいつになるのか、引き続き市場参加者は注目していくというスタンスには変化が無いでしょう。今回のFOMCで8月下旬のジャクソンホールは更に注目度が高くなったように思います。

しかし株式市場はS&Pが史上最高値を更新した後ということもありますが、将来的な利上げ観測を嫌気して先週後半以降は下げ続けていますので、従来型の動きであるリスクオフによる株安と円買いの動きが米金利低下によるドル安と重なっての動きという流れになってきそうです。

テクニカルにも見ていきましょう。日足チャートをご覧ください。

4月安値を起点とした上昇ウェッジですが、先週の高値で上値側を若干抜けたため引き直しています。大きくは緩やかなドル高円安の動きの中で、短期的には調整のドル売りという見方がテクニカルには妥当でしょう。ただ、以前と異なるのはクロス円でも円買い方向へと大きく巻き返しが起きていますので、動き次第では株安とともに下押しが強まる場面も出てくるかもしれないという点でしょうか。

ここではサポートラインではいったん下げ止まると見て109円台半ばをサポートと考えます。ただ先週のFOMC後の動きを見ると110円台半ばでは水準を下げてドル売りオーダーが出てくると見られます。

今週は110円の大台を挟んで109.50レベルをサポートに、110.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の週間見通し

ドル円(日足)チャート



このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月21日(月)
08:01 英国6月住宅価格
10:30 豪州5月小売売上高
19:30 ポルトガル中銀総裁講演
22:30 (セントルイス連銀総裁講演)
23:15 ラガルドECB総裁議会証言
28:00 NY連銀総裁講演

6月22日(火)
23:00 ユーロ圏6月消費者信頼感速報値
23:00 米国5月中古住宅販売
23:30 (クリーブランド連銀総裁講演)
24:00 サンフランシスコ連銀総裁講演
27:00 パウエルFRB議長議会証言

6月23日(水)
08:50 日銀会合議事要旨公表
16:15 フランス6月製造業・サービス業PMI
16:30 ドイツ6月製造業・サービス業PMI
16:30 デギンドスECB副総裁講演
17:00 ユーロ圏6月製造業・サービス業PMI
17:00 南ア5月CPI
17:30 英国6月製造業・サービス業PMI
22:00 ボウマンFRB理事講演
22:45 米国6月製造業・サービス業PMI
23:00 米国5月新築住宅販売
23:30 週間原油在庫統計
**:** 英中銀MPC(〜24日)

6月24日(木)
15:45 フランス6月企業景況感
15:45 黒田日銀総裁講演
17:00 ドイツ6月ifo企業景況感
18:30 南ア5月PPI
20:00 英中銀MPC結果発表
20:30 パネッタECB理事講演
21:30 米国1〜3月期GDP確報値
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国5月耐久財受注
24:00 NY連銀総裁講演
24:30 シュナーベルECB理事講演
26:00 (セントルイス連銀総裁講演)
**:** EUサミット(〜25日)

6月25日(金)
07:45 NZ5月貿易収支
08:01 英国6月消費者信頼感
08:30 本邦6月東京区部CPI
15:00 ドイツ7月消費者信頼感
21:30 米国5月個人所得・消費支出
23:00 米国6月ミシガン大消費者信頼感
24:35 (クリーブランド連銀総裁講演)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月14日(月)
 週明けのドル円は東京前場こそ株高とともにドル買いが先行したものの株がすぐに反落、ドル円も金曜高値を超えられなかったことから欧州市場前場には早朝安値まで下押し。しかし下値も底堅く再びドル買いが目立つ中、NY市場に入り米金利上昇に素直に反応し、テクニカルにも金曜高値を上抜けたことから仕掛けの買いも加わり110.10レベルまで上伸後、110円の大台を維持して引けました。

6月15日(火)
 ドル円はFOMCを控えてほとんど動きが見られませんでした。欧州市場では前日高値をわずかに上回り110.17レベルの高値をつけましたが、終日レンジはわずか18銭にとどまり、110円をわずかに上回る水準で様子見の1日となりました。

6月16日(水)
 FOMCを前にして為替市場は小動き、若干ドル円は上値が重たい動きを続けてのFOMC待ちとなりました。結果は現状維持であったものの、将来の金利を予測するドットチャートの分布において2023年までの利上げを予測する参加者が前回からほぼ倍増の13人となり、市場の予想よりもかなりタカ派な内容となりました。この結果を受け米金利は直前の1.48%台から1.59%台へと上昇、為替市場もドルが大幅高となりドル円は110.72レベルの高値をつけドル高値圏での引けとなりました。

6月17日(木)
 ドル円は前日FOMC後の流れを受けてドル高が先行し前場には110.82レベルの高値をつけ、NY市場までは110円台半ばから後半でのもみあいを続けました。しかしNY市場に入り弱い経済指標に加え米金利がFOMC前の水準へと下押ししたことからドル円は110.16レベルまで下押しし安値引けとなりました。

6月18日(金)
 ドル円は東京前場には動意薄だったものの、後場に入りユーロ円の売りをきっかけ110円台前半から109円台後半へとやや水準を下げました。109.94レベルで安値を確認するとユーロドルの売りからドル円にもドル買い戻しが入りNY前場に110.48レベルの日中高値をつけましたが、引けにかけてはユーロ円の売りに押され東京朝方の水準での引けとなりました。

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