米FOMCがメインイベント。テーパリング観測再燃なるか
〇今週のドル円前週末の雇用統計不冴えの余波で週明け109.18まで下落
〇その後米CPIの上昇とテーパリング観測再燃、対ユーロでのドル買い圧力に週末にかけ109.85まで反発
〇ユーロドルECBのテーパリング観測に週半ばにかけ1.2219まで上昇
〇ECB理事会はテーパリング観測一蹴、週末にかけ1.2093まで下落、小反発して1.21台回復
〇ドル円テクニカルの地合い強く下値余地は限定的
〇来週は米FOMC、インフレ見通し、ドットプロットの配置に注目
〇他にも米ロ首脳会談、日銀金融政策決定会合等イベント目白押し
〇来週の予想レンジ(USDJPY):108.50ー111.00、(EURUSD):1.1975−1.2225
今週のレビュー(6/7−6/11)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初109.51で寄り付いた後、@先週末金曜日に発表された冴えない米雇用統計後のドル売りの流れ(米早期テーパリング観測後退→米長期金利低下→米ドル売り)や、A上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り、B先週6/3に発表された「ロシア政府系ファンドである国民福祉基金のドル建て資産の保有高をゼロにし、ユーロや人民元、金にシフトする」「資産構成の変更は今後1ヶ月以内に実施予定」との発言が重石となり、週明け海外時間に、5/27以来となる安値109.18まで下落しました。
しかし、一目均衡表基準線に続落を阻まれると、C重要イベント(ECB理事会や米消費者物価指数、6/15ー6/16のFOMC、6/17ー6/18の日銀金融政策決定会合)を控えたポジション調整や、D米5月消費者物価指数(結果5.0%、予想4.7%、前回4.2%、※前年同月比)および、E同コア指数(結果3.8%、予想3.4%、前回3.0%、※前年同月比)の伸び率上昇、F上記DEを背景とした米早期テーパリング観測の再燃(米インフレ懸念→米長期金利の低下幅縮小→米ドル高。米10年債利回りは米雇用統計前に記録した1.63%から1.43%へ急低下した後、1.46%へ下げ幅を縮小)、G対ユーロでのドル買い圧力(ECB理事会後のユーロ売り・ドル買い)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値となる109.85まで反発しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間6/12午前4時40分現在)では109.70近辺で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.2168で寄り付いた後、@欧州圏における新型コロナウイルスの終息期待や、A上記@を背景としたECBによる根強いテーパリング観測(ECB理事会を控えた警戒感)、B先週末金曜日に発表された低調な米雇用統計後のドル売りの流れ(米早期テーパリング観測後退→米長期金利低下→米ドル売り)が支援材料となり、週半ばにかけて、週間高値1.2219まで上昇しました。
しかし、6/2高値1.2227をバックに伸び悩むと、C米5月消費者物価指数が市場予想を上回ったことに伴うドル買い圧力(米長期金利低下に歯止めがかかり、その後上昇に転じたこと)や、DECB理事会にて現行の金融政策が据え置かれたことに伴うユーロ売り圧力(ECBは政策金利を据え置くと共に、パンデミック緊急購入プログラムPEPPの購入規模も現行水準に留めることを決定。ラガルドECB総裁も、「PEPP終了議論は時期尚早」と一蹴。市場では、ECBによる早期テーパリング観測後退を背景にユーロ売りが活発化。但し、ユーロ圏景気見通しについては、2021年が4.0%→4.6%、2022年が4.1%→4.7%へそれぞれ上方修正)が重石となり、週末にかけて5/14以来、約1ヵ月ぶり安値となる1.2093まで反落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間6/12午前4時40分現在)では、1.2107近辺で推移しております。
来週の見通し(6/14−6/18)
<ドル円相場>
ドル円は6/4に記録した約2ヵ月ぶり高値110.34をトップに反落に転じると、今週初にかけて一時109.18まで下落しました。しかし、強い買いシグナルを示唆する三役好転が継続していること、ダウンサイドに強力な支持帯として意識される一目均衡表雲上限が控えていること、ダウ理論における上昇トレンドが継続していること(上値と下値を同時に切り上げる展開。5/25に記録した安値108.57を下抜けない限り、上昇トレンドは継続)などを踏まえると、テクニカル的に見て、下値余地は限定的と判断できます(事実、週末にかけて109.85まで持ち直す展開に)。
こうした中、来週は6/15−6/16に予定されている米FOMCに注目が集まります(日本時間6/17の午前3時にFOMC声明およびSummary of Economic Projectionsが発表。同3時30分からパウエルFRB議長記者会見)。6/4の米雇用統計を受けて米早期テーパリング観測はひとまず後退しましたが、6/10の米消費者物価指数が市場予想を上回ったことで、米早期テーパリング観測が再浮上しつつあります。FOMCにおける注目ポイントは以下2つと考えております。一つ目はSummary of Economic Projectionsにおけるインフレ見通しの項目。FRB当局者は再三にわたり「インフレリスクは一時的」との見解を述べていますが、2022年のインフレ見通しが引き上げられた場合、FRB当局者のこれまでの発言との不一致が出てくることから、市場参加者は「早期テーパリングのシグナル」と解釈する可能性が高いでしょう。
二つ目はSummary of Economic Projectionsにおけるドットプロットの配置。前回3月時点では2022年末までの利上げ投票者は4名、2023年末までの利上げ投票者は7名でしたが、これらの人数が増加するか否か、加重平均値が押し上げられるか否かに注目が集まります。人数や加重平均値が増加した場合、市場参加者は「早期テーパリングのシグナル」と捉えることから、8月ジャクソンホールでのテーパリング宣言→12月会合でのテーパリング開始といったシナリオが浮上し、米長期金利上昇→米ドル高の経路でドル円相場の上昇に繋がる展開が想定されます。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(6/4に記録した直近高値110.34を試すシナリオを想定)。尚、来週は、FOMC以外にも、6/15に予定されている米5月小売売上高や、6/16の米露首脳会談(6/3にロシア政府系ファンドである国民福祉基金がドル建て資産の保有高をゼロにすることを発表している為、関係改善ならドルの買い戻し要因、関係悪化ならドル売り要因として警戒)、6/17ー6/18の日銀金融政策決定会合など、注目イベント目白押しとなる為、ボラティリティの拡大に注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(USDJPY):108.50ー111.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/25に記録した約4ヵ月半ぶり高値1.2267をトップに反落に転じると、今週末にかけて、約1ヵ月ぶり安値となる1.2093まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドを下抜けするなど、テクニカル的に見て、短期的な下落リスクが警戒されます(※来週は遅行線の26日前のローソク足接触や、一目均衡表転換線の基準線下抜けを通じて、強い買いシグナルを示唆する三役好転が終了する可能性大)。目先は、ダウンサイドに控える90日移動平均線(1.2037)や、一目均衡表雲上限(1.2000)、200日移動平均線(1.1991)、5/5に記録した直近安値(1.1985)を試すシナリオが想定されます(特に5/5安値1.1985を下抜けた場合、ダウ理論における上昇トレンド崩壊で地合いが一段と悪化する恐れ)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ECBによる早期テーパリング観測の後退(ラガルド総裁もテーパリング議論開始は時期尚早とのスタンスを変えず)や、AECBによるユーロ高牽制の思惑、B米インフレ懸念に端を発した根強いテーパリング観測(6/15−6/16の米FOMCへの警戒感)、C北アイルランドを巡る英EU間の衝突リスク(英国領北アイルランドの通商問題を巡って、英国とEUはそれぞれ強硬策を示唆→6/17に予定されているユーロ圏財務相会合への警戒感)など、ユーロドルの下落を意識させる材料が増えつつあります。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にもファンダメンタルズ的にも、下落リスクが警戒されます。欧州圏の経済イベント(6/14のユーロ圏4月鉱工業生産や、6/17のEU新車登録台数など)や、欧州当局者発言(6/14のシュナーベルECB専務理事講演、6/15のファインランド中銀レーン総裁講演、パネッタECB専務理事講演、オーストリア中銀ホルツマン総裁講演、6/17のフランス中銀ビルロワドガロー総裁講演、イタリア中銀ビスコ総裁講演など)、米FOMCの結果を睨みながらも、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1975−1.2225
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:上村 和弘
2021.06.14
ドル円見通し 米長期債利回りは大幅低下のままだがドル高に(週報6月第2週)
6月7日以降の展開は60分足で見れば「下値支持線がやや切り上がり、上値抵抗線が切り上がるレンジ拡張型の逆三角持ち合い」の様相でもある。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2021.06.11
ドル/円はレンジ抜けられず、小動き継続も(6/11夕)
11日の東京市場はほぼ横ばい推移。わずか15ポイント程度のレンジ取引で、動意らしい動意はほぼうかがえなかった。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。