ドル円見通し 米CPIの上ブレと失業保険申請減少続くも米長期債利回りは大幅低下でドル安に(21/6/11)

米10年債利回りが当初は上昇反応を見せていたものの急低下に転じたことでドル円も急落に転じ、11日未明には109.29円まで反落した。

ドル円見通し 米CPIの上ブレと失業保険申請減少続くも米長期債利回りは大幅低下でドル安に(21/6/11)

米CPIの上ブレと失業保険申請減少続くも米長期債利回りは大幅低下でドル安に

〇ドル円、米CPI発表後109.79へ上昇するも、米10年債利回り急低下により6/11未明109.29まで反落
〇米10年債利回り、5/7の急落時水準を割り込む大幅低下
〇雇用の順調な回復と物価上昇率の上ブレがあっても、量的緩和政策継続のスタンスに大きな変化はないか
〇109.60以上での推移中は一段安警戒とし、109.17割れからは108.75前後への下落を想定する
〇109.60超えからは109.79手前を試す可能性があるとみるが、その後に反落しやすいとみる

【概況】

ドル円は6月10日夜の米消費者物価上昇率の発表からいったん109.79円へ上昇して6月7日夜安値109.17円以降の戻り高値を切り上げたが、米10年債利回りが当初は上昇反応を見せていたものの急低下に転じたことでドル円も急落に転じ、11日未明には109.29円まで反落した。
6月3日の米ADP民間雇用報告で就業者数が予想を大幅に超える急増となったことで3日夜に急伸して4日朝には110.33円まで高値を切り上げたが、6月4日の労働省雇用統計での就業者増加数が期待外れの水準に留まったことで揺れ返しの急落となって7日夜には109.17円まで続落し、6月3日の急騰開始前水準を大幅に下回った。その後は10日の米消費者物価上昇率の発表を見ようとやや買い戻し優勢の展開で推移し、9日夜の反落時も109.21円までの下げにとどまって底上げをし、10日夜の消費者物価上昇率発表と米長期債利回り反応を見ていったんは買われたのだが、米長期債利回りは急低下に転じたことでドル円は強気の梯子を外された。

【米10年債利回りは5月7日の急落時水準を割り込む大幅低下】

米10年債利回りは6月9日に1.47%台まで低下していたところから、米消費者物価上昇率等の発表から1.52%台へいったん上昇したが、この動きは長続きせずに低下へ転じ、前日の水準を割り込むとさらに下げ足を速めて1.43%台まで大幅低下した。5月7日の4月米雇用統計がさえなかったことで1.46%まで一時的に急落してから戻したが、その時の水準も割り込んだため、3月30日の1.77%をピークとした利回り上昇局面の頭打ち感が強まった。
米消費者物価上昇率は市場の予想を超える上ブレが続いたものの、米連銀が繰り返し「インフレ上昇の上ブレは一時的」として「雇用回復までは忍耐強く金融緩和を続ける」と強調してきたことで市場も物価上昇率に対する反応が徐々に鈍ってきていたが、今回も米連銀のスタンスは大きくは変わらない程度とみて初期的な反応でいったん上昇したものの早々に低下へ向かったといえる。

米労働省が発表した5月消費者物価指数上昇率は前月比0.6%で市場予想の0.4%上昇を上回ったが、4月に0.8%を付けて2009年6月以来の伸びとなったところから伸びは鈍化した。前年同月比は5.0%上昇で2008年8月以来の上昇率となり市場予想の4.7%を上回った。昨年の3月から5月にかけてのコロナショックによる景気後退に対する前年比の比較となるため、昨年6月以降の景気回復開始時との比較に入れば今後は前年比の上昇率もベースダウンする可能性がある。
米労働省が発表した新規失業保険申請は前週比9000件減少の37万6000件で市場予想の37万件を上回ったものの6週連続で前週を下回る改善となった。失業保険受給者総数は5月29日までの週間で349万9000人となり前週比25万8000人減少して市場予想の360万2000人を下回った。

米連銀にとっては雇用の回復は順調だが、まだ昨年春の大量失業を解消できていないため、物価上昇率が多少上ブレしたとしても雇用回復へ向けて量的緩和政策を継続してゆくスタンスに大きな変化はないだろうと思われる。ただ、順調な景気回復を踏まえ、2023年末までは利上げせずに金融緩和政策を継続するとしてきた見通しを多少前倒しして2023年中の利上げの可能性がやや高まり、量的緩和縮小の議論も夏以降には始まる可能性も徐々に強まるのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は6月7日夜安値からは9日夜安値へと安値ラインを若干切り上げ、戻り高値も8日夜から10日午前、10日夜と切り上げてきたところから失速した。11日早朝時点では安値ラインを割り込んでおらず、レンジ拡張型の逆三角持ち合いの様相でもある。109.25円割れからは安値ラインを割り込んで持ち合い下放れに入り、下げ足が早まる可能性もあるところと思われる。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、6月1日午前安値から4日半となる6月7日深夜安値で前回のサイクルボトムを付けて戻しに入ったとし、高値形成期を9日の日中から11日午前にかけての間と想定してきたが、10日夜高値でサイクルトップを付けて下落に転じたと思われる。安値形成期は10日夜から14日深夜にかけての間と想定されるので反騰注意期に入っているものの、安値更新からの一段安警戒とみる。

60分足の一目均衡表では10日夜からの反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したので遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを再び上抜き返す場合は上昇再開の可能性もあるとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は30ポイント台へ低下してからも50ポイント以下での推移となっているのでまだ一段安余地ありとし、30ポイント割れからは20ポイント前後への低下へ向かうとみる。50ポイント台へ戻すところは売られやすいとみるが、60ポイントを超える反騰なら上昇再開へ向かいやすくなるとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月7日深夜安値109.17円を下値支持線、10日夜高値109.79円を上値抵抗線とする。
(2)109.60円以上での推移中は一段安警戒とし、7日深夜安値割れからは108.75円前後への下落を想定する。108.75円以下は反騰注意とみるが、下げ足が早まる場合は5月25日安値108.55円を試す流れへ進む可能性もあるとみる。また109.40円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.40円から109.60円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる。109.60円超えからは109.79円手前を試す可能性があるとみるが、そこはダブルトップ形成となってその後に反落しやすいとみる。

【当面の主な予定】

6/11(金)
G7首脳会議(6月13日まで、英コーンウォール)
15:00 (英) 4月 月次GDP 前月比 (3月 2.1%、予想 2.4%)
15:00 (英) 4月 鉱工業生産指数 前月比 (3月 1.8%、予想 1.3%)
15:00 (英) 4月 鉱工業生産指数 前年同月比 (3月 3.6%、予想 30.7%)
15:00 (英) 4月 製造業生産指数 前月比 (3月 2.1%、予想 1.5%)
15:00 (英) 4月 貿易収支・物品 (3月 -117.10億ポンド、予想 -118.00億ポンド)
15:00 (英) 4月 貿易収支・全体 (3月 -19.66億ポンド、予想 -22.50億ポンド)
15:00 (独) 5月 卸売物価指数WPI 前月比 (4月 1.1%)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (5月 82.9、予想 84.0)


注:ポイント要約は編集部

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