『米CPIがメインイベント。インフレ懸念の顕在化に要警戒』
〇ドル円週前半に109.32まで下落するも、連休明けの欧米勢の買いや良好な米指標に110.33まで上昇
〇しかし週末発表の米雇用統計でNFPが市場予想を下回ると反落、109.55近辺で越週
〇ユーロドル良好な欧州経済指標等に1.2255まで上昇するもドル買い圧力強まり週末にかけ1.2104に急落
〇米雇用統計発表後はドル売り優勢となり1.2165まで持ち直して越週
〇ドル円約2ヵ月ぶり高値圏から反落に転じるも、テクニカルな下値余地は限られるか
〇ファンダメンタルズも米早期テーパリング観測根強く、バイデン大統領の財政出動期待もドルをサポート
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想、6/10の米5月消費者物価指数に要注目
〇来週の予想レンジ(USDJPY):108.50ー111.00、(EURUSD):1.2000−1.2250
今週のレビュー(5/31−6/4)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初109.83寄り付いた後、@日経平均株価の軟調推移や、A米長期金利の伸び悩み、B月末ロンドンフィキシングに絡むドル売りフロー、C英米市場休場に伴うポジション調整が重石となり、翌6/1に、週間安値109.32まで下落しました。しかし、一目均衡表転換線に続落を阻まれると、D連休明け欧米勢によるドル買い圧力(米早期テーパリング観測再燃→米長期金利上昇→米ドル高)や、E米経済指標の力強い結果(米5月ISM製造業景況指数、米地区連銀経済報告、米5月ADP雇用統計、米5月ISM非製造業景況指数など)、F5/28に記録した直近高値110.21突破に伴う短期筋のロスカット、Gバイデン米大統領による増税案の撤回提案(代替案として法人税の最低税率を15%に設定)が支援材料となり、週末にかけて、4/6以来、約2ヵ月ぶり高値となる110.33まで上昇しました。
もっとも、H注目された米雇用統計(非農業部門雇用者数)が市場予想を下回る不冴な結果となると、I米早期テーパリング観測の後退(米長期金利低下→ドル売り)や、J6/3に発表されたロシア財務相による米ドル建て資産撤退発言(ロシア政府系ファンドによる米ドル建て資産の保有高をゼロにし、ユーロや人民元、金にシフト。資産構成の変更は今後1ヶ月以内に実施予定)が改めて材料視され、結局109.55近辺まで値を崩しての越週となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.2192で寄り付いた後、@欧州圏における新型コロナウイルスの終息期待や、A上記@を背景としたECBによる根強いテーパリング観測、Bドイツ5月消費者物価指数(結果2.5%、予想2.3%、前回2.0%、※前年同月比)及び、Cユーロ圏5月消費者物価指数(結果2.0%、予想1.9%、※前年同月比)の伸び率上昇、D米長期金利の伸び悩み、E月末ロンドンフィキシングに絡むドル売りフロー、Fユーロ圏5月製造業PMI改定値(結果63.1、予想62.8)の良好な結果が支援材料となり、翌6/1にかけて、約1週間ぶり高値となる1.2255まで上昇しました。
しかし、5/25に記録した直近高値1.2267をバックに伸び悩むと、G米早期テーパリング観測の高まりを背景としたドル高圧力や、Hドイツ4月小売売上高(結果▲5.5%、予想▲2.0%、前回7.7%、※前月比)の冴えない結果、I良好な米経済指標を背景としたドル高圧力、JECB当局者(特にラガルド総裁)によるユーロ高牽制の思惑が重石となり、週末にかけて、5/14以来、約3週間ぶり安値となる1.2104まで急落しました。もっとも、K市場参加者に注目されていた米雇用統計が冴えない結果となると、L米早期テーパリング観測の後退を受けた米長期金利低下が支援材料となり、結局1.2165近辺まで持ち直しての越週となっております。
来週の見通し(6/7−6/11)
<ドル円相場>
ドル円は不冴な米雇用統計を背景に約2ヵ月ぶり高値圏から反落に転じましたが(110.33→109円台半ば)、強い買いシグナルを示唆する三役好転が継続していること、ダウンサイドに一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や一目均衡表雲上限といった主要テクニカルポイントが並んでいること、ダウ理論における上昇トレンド(上値と下値の同時切り上げ)が成立していること等を踏まえると、下値余地は限定的と考えられます(短期上昇トレンドの継続)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米早期テーパリング観測の高まり(米非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったことで、テーパリング観測が一時後退するも、平均時給の大幅な伸びを見る限り、来週は再びテーパリング観測が高まる可能性あり)や、A上記@を背景とした過剰流動性相場の逆流リスク(資産現金化需要のドル買い要因)、Bバイデン米大統領による財政出動期待など、ドル買い・円売りを意識させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は、6/10に予定されている米5月消費者物価指数に注目が集まります。同指標が市場予想を上回る伸びを示した場合、前月同様(※)、米早期テーパリング観測再燃→米長期金利上昇→米ドル高の波及経路でドル円が米雇用統計後の下げ幅を全値戻しする可能性が高まることから、来週は売り一巡後のアップサイドリスク(反発リスク)に特に注意が必要でしょう(※前月は、5/7に発表された不冴な米雇用統計で109.29→108.33へ反落するも、5/12に発表された米消費者物価指数でインフレ懸念が再燃すると108.59→109.79と早々に全値戻しを達成。来週のドル円相場は前月と同じ流れが繰り返される可能性あり)。
来週の予想レンジ(USDJPY):108.50ー111.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/25に記録した直近高値1.2267をトップに反落に転じると、今週末にかけて一時1.2104まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドを下抜けするなど、短期的な下落リスクが警戒されます。但し、中長期的に見れば、ダウンサイドに90日移動平均線や200日移動平均線、一目均衡表雲上限が控えている為、一方向の下落も想定しづらいと考えられます(一目均衡表三役好転やダウ理論における上昇トレンドも継続しており、下がったところでは押し目買いが出やすいチャート形状。短期的に地合いが悪化するも、5/5に記録した直近安値1.1985を下抜けない限り、中長期的な上昇トレンドは不変と判断)。
こうした中、来週は6/10に予定されているECB理事会に注目が集まります。市場の焦点は、@パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)について、何かしらの示唆が見られるか否か、Aユーロ高牽制姿勢が示されるか否かの2点となっております。ラガルドECB総裁をはじめ、欧州当局者は「テーパリング議論は次期尚早」とのスタンスを変えておらず、今回の理事会で「PEPPの縮小(テーパリング)」についての議論が出てくる可能性は乏しいと考えらえます(※3月の理事会で示された「PEPPの拡大方針」は修正される可能性が高いものの、その点は織り込み済みであるため、相場への影響は限られそうです)。一方、ユーロ高については改めて警戒感(牽制姿勢)が示される可能性が高く、ユーロ売りでの反応が見込まれます。
以上を踏まえ(@テクニカル面での短期的な弱さ+AECBによる早期テーパリング観測の後退+Bユーロ高牽制姿勢の再強化)、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(不冴な米雇用統計を受けて、一時的に米長期金利低下→ドル売り・ユーロ買いの流れが強まりましたが、来週は米インフレ懸念再燃→米早期テーパリング観測再燃→米長期金利上昇→ドル高・ユーロ安といった展開も見込まれることから、ダウンサイドリスクに特に注意が必要でしょう)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.2000−1.2250
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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