ドル円見通し 5月3日と5月13日のダブルトップラインを超えて110円台到達(週報5月第5週)

米景気回復への期待感が株式市場を支えており、為替市場のリスク選好感も下支えている印象だ。

ドル円見通し 5月3日と5月13日のダブルトップラインを超えて110円台到達(週報5月第5週)

ドル円見通し 5月3日と5月13日のダブルトップラインを超えて110円台到達

〇先週のドル円米経済指標の好調を背景に週末一時110.19円まで高値を伸ばす
〇今後も米景気指標と米長期債利回り等を交互に使い分けながら騰勢を維持してゆくか
〇サイクル的には4/23安値を押し目底として高値を更新して二段目の上昇期へ進んでも不思議のない状況
〇110円以下での推移中はまだ安値を試す可能性、更に109.64割れの場合109.37、109.10円前後を試すか
〇110円台回復からは上昇再開、高値更新からは110.50、110.96目指す流れとみる

【概況】

ドル円は5月26日夜の米長期債利回り再上昇をきっかけに5月25日夜高値109.06円を超えて5月13日以降の三角持ち合い型での調整から脱却し、27日夜には5月19日夜の乱高下時に付けた高値109.33円を超えたところから買いの連鎖反応に入って27日深夜には5月13日高値109.78円を超えた。28日夜には110.19円まで高値を伸ばして4月6日以来の110円台到達となったが、深夜にかけては米長期債利回りの低下を見て失速したために110円台は維持できずに週を終えた。

5月28日の米10年債利回りは前日比0.03%低下の1.58%で終了した。米30年債利回りも0.0%低下の2.26%で終わった。一方でNYダウは前日比64.81ドル高、ナスダック総合指数も同12.46ポイント高と堅調だった。米景気回復への期待感が株式市場を支えており、為替市場のリスク選好感も下支えている印象だ。
4月の個人消費支出(PCE)物価指数は前月比0.6%上昇、前年同月比は3.6%上昇で伸び率は2008年9月の3.7%以来12年半ぶりの高水準となった。変動が大きい食料品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.7%上昇、前年同月比は3.1%上昇で1992年7月の3.1%以来約29年ぶりの高水準だった。
物価上昇率の上ブレが米長期債利回り上昇反応を招くのだが、米連銀が現状の物価上昇率の上ブレが一時的とし、忍耐強く金融緩和政策を続けると繰り返し強調してきたことで、市場も物価上昇率への反応が徐々に鈍くなっている。しかし、それでも今後の財政出動の拡大と国債大量発行の継続性を踏まえれば、昨年同期のコロナショック不況時との比較として上ブレしているというレベルを超えて10年債利回りが2%を超えてゆくような展開になっても不思議ないところだ。

【ドル円は米経済指標の強さ=ドル高と、米長期債利回り上昇=ドル高を交互に使いこなす】

5月28日夜は米個人消費支出物価指数が予想を上回る上昇率となり、シカゴPMIやミシガン大消費者信頼感指数等も強い数字だったものの、米長期債利回りはそれらを見ながらも27日に戻りのピークとなった1.62%台から低下傾向を続けて1.57%台まで下がった。それら米経済指標が強かったことが当初はドル買い材料となってユーロドルが1.220ドル手前の水準から1.213ドル台へ一時急落し、ドル円も22時前にこの日の高値を付ける一段高となったのだが、ドル買い一巡後は米長期債利回りの低下を見てユーロドルが直前の急落分を解消する反騰に入り、ドル円も29日未明には109.73円まで反落している。

ドル円が上昇してゆくには、米長期債利回りの上昇による日米金利差を見てのドル買い円売りで上昇するか、または株高を中心としたリスク選好的な投機通貨買いの流れの中でクロス円全般が上昇し、ドル円においても円安が勝る必要がある。5月26日から27日にかけての米長期債利回りの急反発は顕著でありドル円の押し上げに大きく貢献したが、28日の低下はドル円の上昇を抑えた。しかし5月13日高値を超える一段高状態を概ね維持しているのは、米長期債利回りの低下による売り圧力とクロス円全般の反騰による円安感が下支え効果を見せたためと思われる。

今後のドル円にとっては、米経済指標が強めの推移を続ければ米国株高によるリスク選好感を優先して多少の米長期債利回り低下であってもドル高円安基調を維持し、米長期債利回りが上昇する局面では米景気回復期待が大きく後退しなければドル高円安基調を継続しやすいのではないかと思われる。ドル円としては上昇時の推進力となる材料を米景気指標と米長期債利回り等を交互に使い分けながらも騰勢を維持してゆく可能性が考えられる。

【4月23日からの上昇再開感を継続】

ドル円は1月6日底102.57円から3月31日高値110.96円まで上昇幅8.39円の大上昇となった。これは概ね80週前後の底打ちサイクルによる上昇であり、2016年6月底から同年12月15日への急騰時、2018年3月26日底から同年10月4日への上昇時、2019年8月26日底から2020年2月20日高値への上昇時等と同レベルの上昇期と考えられる。それらは26週ないし28週の規模で上昇しており、今回の1月6日底から3月31日高値への上昇がまだ13週に過ぎないことを踏まえれば、4月23日安値を押し目底として高値を更新して二段目の上昇期へ進んでも不思議ないと思われる。
ただし、2016年12月天井以降の右肩下がりの下降チャンネルにおける抵抗線が110円にきており、110円を一時的に超えても維持しきれない状況が繰り返されるなら、今回は26週規模の上昇へは進めずに下降チャンネルの抵抗線到達にとどまる可能性もあるところだ。

5月28日の日足は、ほとんどが上ヒゲであり、週明けも米長期債利回りの低下傾向が続くようだと5月3日高値から5月7日安値への調整安、5月13日高値から5月25日安値への調整安等と同規模の調整安につかまる可能性があるが、その場合も5月7日、5月25日へと底上げしてきた流れを維持できれば、次の上昇期で高値をさらに更新してゆく可能性も維持されると思われる。

5月19日深夜安値108.56円と5月25日夕安値108.55円がダブル底となり、5月13日高値と5月19日高値を結ぶ抵抗線を突破したことにより110円到達までの一段高へと進んできた。5月25日安値から5月28日夜高値までの上昇に対する3分の1押しが109.64円、半値押しが109.37円、3分の2押しが109.10円にある。
5月28日高値110.19円を超える場合、上値目途は3月31日高値110.96円、その上は2020年2月20日天井112.21円と3月24日戻り天井の111.71円まで切り上がる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.64円を下値支持線、28日夜高値110.19円を上値抵抗線とみておく。
(2)110円以下での推移中はまだ安値を試す可能性があるとみる。109.64円前後は押し目買いも入りやすいとみてその後に110円台を回復するところからは上昇再開とみるが、109.64円を割り込む場合は109.37円、さらに109.10円前後を試す可能性が出てくると注意する。ただしその場合も109円台序盤は買い拾われやすいとみる。
(3)110円台回復からは上昇再開の可能性ありとみて5月28日夜高値110.19円試しとし、高値更新からは110.50円、3月31日高値110.96円から111円到達を目指す流れとみる。111円到達ではいったん売られやすいとみるが、5月28日夜高値を超えた後も110円台を維持するか一時的に割り込んでも回復する展開なら上昇基調は継続してゆきやすいとみる。(了)<30日17:45執筆>

【当面の主な予定】

5/31(月)
休場 米国(メモリアルデー)、英国(スプリング・バンクホリデー)
OPECプラス共同技術委員会
08:50 (日) 4月 鉱工業生産・速報値 前月比 (3月 1.7%、予想 4.0%)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (3月 3.4%、予想 17.0%)
08:50 (日) 4月 小売業販売額 前年同月比 (3月 5.2%、予想 15.3%)
10:00 (中) 5月 国家統計局製造業PMI (4月 51.1、予想 51.1)
10:30 (豪) 4月 民間部門信用残 前月比 (3月 1.0%、予想 0.3%)
10:30 (豪) 4月 民間部門信用残 前年同月比 (3月 0.4%、予想 2.3%)
14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 1.5%、予想 5.0%)
14:00 (日) 5月 消費者態度指数・一般世帯 (4月 34.7、予想 33.0)
21:00 (独) 5月 消費者物価指数速報値 前月比 (4月 0.7%、予想 0.3%)
21:00 (独) 5月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (4月 2.0%、予想 2.3%)

6/1(火)
OPECプラス」閣僚級会合
07:30 (豪) 5月 AiG製造業PMI (4月 61.7)
07:30 (豪) 5月 マークイット製造業PMI改定値 (速報 59.7)
07:45 (NZ) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 17.9%)
08:50 (日) 1-3月期 法人企業統計・全産業設備投資額 前年同期比 (10-12月 -4.8%、予想 -8.5%)
10:30 (豪) 1-3月期 経常収支 (10-12月 145億豪ドル)
10:30 (豪) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 17.4%)
10:30 (豪) 1-3月期企業営業利益 前期比 (10-12月 0.0%、予想 0.3%)
10:30 (豪) 1-3月期企業営業利益 前年同期比 (10-12月 -6.6%、予想 4.9%)
10:45 (中) 5月 財新製造業PMI (4月 51.9)

13:30 (豪) 豪準備銀行(豪中銀)、政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
15:00 (英) 5月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (4月 2.1%、予想 1.0%)
16:55 (独) 5月 製造業PMI改定値 (速報 64.0、予想 64.0)
16:55 (独) 5月 失業者数 前月比 (4月 0.90万人、予想 -0.80万人)
16:55 (独) 5月 失業率 (4月 6.0%、予想 6.0%)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI改定値 (速報 62.8、予想 62.8)
17:30 (英) 5月 製造業PMI改定値 (速報 66.1、予想 66.1)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 8.1%、予想 8.1%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (4月 1.6%、予想 1.9%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (4月 0.7%、予想 0.9%)
22:45 (米) 5月 製造業PMI改定値 (速報 61.5、予想 61.5)
23:00 (米) 5月 ISM製造業景況指数 (4月 60.7、予想 61.0)
23:00 (米) 4月 建設支出 前月比 (3月 0.2%、予想 0.6%)
24:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
27:00 (米) ブレイナードFRB理事、講演

6/2(水)
08:50 (日) 5月 マネタリーベース 前年同月比 (4月 24.3%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月 3.1%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10-12月 -1.1%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDPデフレーター 前期比 (10-12月 1.1%)
17:30 (英) 4月 消費者信用残高 (3月 -5億ポンド)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 1.1%)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 4.3%)
25:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、講演
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) ミネアポリス連銀オンラインイベント (ミネアポリス連銀、アトランタ連銀、ダラス連銀各総裁参加)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

6/3(木)
07:30 (豪) 5月 AiG建設業PMI (4月 59.1)
08:00 (豪) 5月 マークイット・サービス業PMI改定値 (速報 58.8)
10:30 (豪) 4月 貿易収支 (3月 55.74億豪ドル)
10:30 (豪) 4月 輸入 前月比 (3月 4.0%)
10:30 (豪) 4月 輸出 前月比 (3月 -2.0%)
10:30 (豪) 4月 小売売上高確報 前月比 (速報 1.3%)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 56.3)
16:55 (独) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 52.8、予想 52.8)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 55.1、予想 55.1)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 61.8)

21:15 (米) 5月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (4月 74.2万人、予想 70.0万人)
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 5.4%、予想 5.5%)
21:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 40.6万件)
21:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 364.2万人)
22:05 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加
22:45 (米) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 70.1、予想 70.0
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 62.7、予想 63.0)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
26:50 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
28:05 (米) クォ―ルズFRB副議長、講演

6/4(金)
中国・天安門事件から32年目
G7財務相会合(6/4〜6/5、ロンドン)
サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(6/4〜6/5)
国際決済銀行(BIS)等主催のる金融と気候変動巡る会議「グリーンスワン2021」(6/4〜6/5)
08:30 (日) 4月 全世帯消費支出 前年同月比 (3月 6.2%、予想 9.9%)
17:30 (英) 5月 建設業PMI (4月 61.6)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 2.7%、予想 -1.0%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 12.0%、予想 25.0%)
20:00 (米) パウエルFRB議長、BISパネル討論会参加
20:00 (欧) ラガルドECB総裁、BISパネル討論会参加
21:30 (米) 5月 非農業部門雇用者数変化 前月比 (4月 26.6万人、予想 67.5万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 6.1%、予想 5.9%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.7%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前年同月比 (4月 0.3%、予想 1.6%)

ドル円見通し 5月3日と5月13日のダブルトップラインを超えて110円台到達

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る