ドル円見通し 乱高下からのダメ押しで二度目のダブル底形成を試す(週報5月第4週)

米10年債利回り低下では売られやすいが、1.70%を超えてくるようだと米長期債利回り再上昇によるドル高円安感が強まる可能性

ドル円見通し 乱高下からのダメ押しで二度目のダブル底形成を試す(週報5月第4週)

ドル円見通し 乱高下からのダメ押しで二度目のダブル底形成を試す

○先週のドル円、仮想通貨市場暴落を契機に19日深夜に108.56まで急落後にV字反騰し109.33まで迫る
○ただし高値更新は至らず再び失速、21日夜には108.59円まで下げたが底割れは回避
○米10年債利回りは5/7の急低下後1.7%まで戻し、その後はやや低下傾向した水準で落ち着く
○この1週間の米指標からは、景気回復に多少のブレをみせつつも基調は確りしている印象
○108.75割れからは5/19日安値108.56試し、安値更新からは5/7安値108.32試し
○5/19高値109.33超えからは5/13高値109.78試し、高値更新からは110円台回復を目指す流れに

【概況】

ドル円は5月13日午前高値で109.78円へ上昇して5月3日高値109.69円をわずかに上抜いたところから下落に転じ、5月19日に仮想通貨市場の暴落をきっかけとした金融市場全般の混乱の中で19日深夜に108.56円まで急落してからV字反騰となり19日夜急落前高値109.33円に迫ったものの高値更新に至らずにミニ・ダブルトップとなって再び失速した。21日夜には108.59円まで下げて19日深夜安値へ迫ったが底割れは回避してやや戻し気味に週を終えた。

米10年債利回りは5月7日に1.50%割れまで急低下したところから5月13日に1.7%まで戻したが、その後はやや低下傾向にあり、5月21日も前日比0.01%低下の1.62%で落ち着いている。ドル円としては米10年債利回りが1.70%以下での推移なら3月30日の1.77%で頭打ちとなった状況は変わらずとして米10年債利回り低下では売られやすいが、1.70%を超えてくるようだと米長期債利回り再上昇によるドル高円安感が強まってくると思われる。

この1週間ではNY連銀景況指数やフィラデルフィア連銀景況指数が前月から悪化、住宅着工件数等がさえず、失業保険申請件数は順調に減り、マークイットのPMIは製造業もサービス業も統計開始以来最高となるなど、景気回復も多少のブレをみせつつも基調は確りしている印象となっている。
米連銀としては徐々にテーパリング(量的緩和縮小)議論を始めるべき時期も迫ってくると思われるが、従来からの「インフレの上ブレは一時的なものとして忍耐強く量的緩和を継続する」という姿勢がしばらく変わらないとすれば、市場としては近い将来のテーパリング開始を徐々に織り込みつつ、株高債券安による米長期債利回りへの押し上げ圧力、インフレ進行による利回り上昇圧力が続き、今後も繰り返される米国債の大量発行による債券需給緩和での利回り上昇圧力を反映する形でドル円も年初からの上昇基調を維持しやすい環境での推移となるのではないかと思われる。

【80週サイクルによる上昇期を継続できるかどうか試す】

ドル円は1月6日安値で概ね80週前後の周期による底打ちサイクルで底打ち反騰に入った。3月31日高値まで13週の上昇で上げ幅は8.39円まで拡大したが、4月23日安値で107.46円まで下げ幅3.50円の反落となった。その後は持ち直しつつあるものの新たな高値更新へ進めずにいる。
大幅上昇したところから3円超規模の反落としては、前々回の80週サイクルによる底打ち反騰において2018年3月26日底から同年10月4日高値まで28週の上昇で上げ幅9.91円となったところから10月26日安値まで3.17円の下落となり、その後は持ち直したものの新たな高値更新へ進めないまま同年12月に10月26日安値を割り込んで翌年1月3日安値104.82円へと急落した経緯がある。

80週サイクルによる上昇は2016年6月底から同年12月高値へ26週、2018年3月底から同年10月高値へ28週、2019年8月底から2020年2月高値へ26週というように半年規模の上昇を実現してきたため、今回も同様の期間の上昇が期待されるものの、2016年12月高値以降の下降チャンネルの上限である110円台に到達した後の足踏み状態のため、2018年10月高値以降の展開に近い動きに終わる可能性もあるところだ。
このため、4月23日安値を割り込まないうちは5月13日高値超えから3月31日高値試しとし、高値更新からは2020年2月高値112.21円、2018年10月高値114.54円等を目指す可能性があるとみるが、4月23日安値を割り込む場合は2018年末型の下落期入りとして80週サイクルの上昇が一巡する可能性も抱えていると留意しておきたい。

【108円台中盤を下値支持帯としたボックス型持ち合いと当面のポイント】

ドル円見通し 乱高下からのダメ押しで二度目のダブル底形成を試す

5月12日の米4月消費者物価指数が予想以上の上ブレとなったことによるドル高を消化して5月13日からはユーロやポンドが上昇に転じてきたのだが、5月21日夜にはユーロが19日午後高値を超えずに60分足レベルにおけるダブルトップ型となって失速、ポンドも5月21日夜に18日高値をわずかに上抜いたところでダブルトップ型となって失速している。これらとの逆相関としてドル円も5月19日深夜安値と5月21日夜安値によりダブル底を形成した含みで戻している印象がある。

同様のケースは5月7日の米雇用統計が予想外に低調だったことでのドル円急落による5月7日夜安値と5月11日夜にもう一度安値試しとなってダブル底を形成した時にもみられる。
ドル円は5月3日高値と5月13日高値を日足レベルのダブルトップとしているが、4月23日安値から反騰して以降は、4月29日午前安値108.42円、5月7日夜の108.32円と5月11日の108.34円、5月19日深夜の108.56円と21日夜の108.59円を主要な安値として108円台中盤では下支えの効いた状況にあり、凡そ1か月近くボックス型の持ち合い相場で推移しているものと言える。
このレンジ相場の中心値は概ね109円であり、109円台序盤へ戻しても維持できないうちは持ち合い下限試しへ向かいやすくなるが、109円台を維持して足場が固まれば持ち合い上限を目指し、持ち合い上放れへ挑戦する目も出てくると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面は5月19日の乱高下における高値109.33円を上値抵抗線、19日深夜安値108.56円を下値支持線とする。
(2)108.75円割れからは19日深夜安値108.56円試しとし、安値更新からは5月7日夜安値108.32円試しとする。5月7日安値割れ回避で109円台へ切り返すところからは上昇再開とするが、108.75円以下での推移が続くうちは下向きの展開が続きやすいとみる。
(3)19日夜高値109.33円超えからは反騰入りとして5月13日高値109.78円試しとし、高値更新からは110円台回復及び3月31日高値110.96円を目指す流れとみる。(了)<23日16:40執筆>

注:ポイント要約は編集部

【当面の主な予定】

5/24(月)
休場、カナダ(ビクトリア女王誕生日)、ドイツ、スイス、ノルウェー(聖霊降臨祭)
EU首脳会議(5/24〜25日)
07:45 (NZ) 1-3月期 小売売上高指数 前期比 (10-12月 -2.7%、予想 -1.8%)
20:05 (日) 黒田東彦日銀総裁、2021年国際コンファランスで挨拶
22:00 (米) ブレイナードFRB理事、暗号通貨会議講演
23:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、発言
24:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、パネル討論会
25:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

5/25(火)
06:30 ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演
15:00 (独) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 -1.7%、予想 -1.7%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 -3.0%、予想 -3.0%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP改定値、季調前 前年同期比 (速報 -3.3%、予想 -3.3%)
17:00 (独) 5月 IFO企業景況感指数 (4月 96.8、予想 98.1)

22:00 (米) 3月 米連邦住宅金融局(FHFA)住宅価格指数 前月比 (2月 0.9%、予想 1.3%)
22:00 (米) 1-3月期 米連邦住宅金融局(FHFA) 前期比 (10-12月 3.8%)
22:00 (米) 3月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (2月 11.9%、予想 12.5%)
23:00 (米) 4月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (3月 102.1万件、予想 95.0万件)
23:00 (米) 4月 新築住宅販売件数 前月比 (3月 20.7%、予想 -7.0%)
23:00 (米) 5月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (4月 121.7、予想 119.3)
23:00 (米) 5月 リッチモンド連銀製造業指数 (4月 17、予想 19)
23:00 (米) クオールズFRB副議長、上院銀行委員会証言
25:00 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
26:00 (米) 財務省2年債入札

5/26(水)
休場、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア(仏誕節・釈迦生誕日)
08:50 (日) 4月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (3月 0.7%、予想 0.9%)
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ、NZ中銀)政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
09:30 (豪) 4月 ウエストパック景気先行指数
14:00 (日) 3月 景気先行指数CI改定値 (速報 103.2)
14:00 (日) 3月 景気一致指数CI改定値 (速報 93.1)
18:00 (仏) ヴィルロワ・ド・ガロー仏中銀総裁、仏議会証言
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省5年債、2年物変動利付債入札

5/27(木)
10:30 (豪) 1-3月期 民間設備投資 前期比 (10-12月 3.0%、予想 2.1%)
15:00 (独) 6月 GFK消費者信頼感 (5月 -8.8、予想 -5.2)
18:45 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
20:00 (英) ブリハ英中銀委員、講演
21:30 (米) 4月 耐久財受注 前月比 (3月 0.5%、予想 0.8%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (3月 1.6%、予想 0.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 44.4万件、予想 42.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 375.1万人)
21:30 (米) 1-3月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 6.4%、予想 6.5%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP個人消費改定値 前期比年率 (速報 10.7%、予想 10.9%)
21:30 (米) 1-3月期 アPCE改定値 前期比年率 (速報 2.3%、予想 2.3%)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前月比 (3月 1.9%、予想 0.8%)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前年同月比 (3月 25.3%)
26:00 米財務省7年債入札

5/28(金)
08:30 (日) 4月 失業率 (3月 2.6%、予想 2.7%)
08:30 (日) 4月 有効求人倍率 (3月 1.10、予想 1.10)
08:30 (日) 5月 東京都消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (4月 -0.2%、予想 -0.2%)
15:00 (独) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 1.8%、予想 1.0%)
15:00 (独) 4月 輸入物価指数 前年同月比 (3月 6.9%、予想 9.9%)
15:45 (仏) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
16:00 (仏) ヴィルロワ・ド・ガロー仏中銀総裁、講演
18:00 (欧) 5月 消費者信頼感確定値 (速報 -5.1)
18:00 (欧) 5月 経済信頼感 (4月 110.3、予想 112.1)

21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 21.1%、予想 -15.0%)
21:30 (米) 4月 個人消費支出(PCE) 前月比 (3月 4.2%、予想 0.5%)
21:30 (米) 4月 PCEデフレーター 前年同月比 (3月 2.3%、予想 3.5%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前月比 (3月 0.4%、予想 0.6%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (3月 1.8%、予想 3.0%)
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 72.1、予想 69.0)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 82.8、予想 83.0)

5/31(月)
休場 米国(メモリアルデー)、英国(スプリング・バンクホリデー)

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