来週の為替相場見通し:『雇用統計悪化で米テーパリング観測後退。ドル売り再燃か』(5/8朝)

ドル円は5/3に記録した高値109.71(4/13以来の高値)をトップに反落に転じると、週末にかけて一時108.35まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『雇用統計悪化で米テーパリング観測後退。ドル売り再燃か』(5/8朝)

『雇用統計悪化で米テーパリング観測後退。ドル売り再燃か』

〇今週のドル円週初早々に109.71まで上昇するも週末にかけて108.35まで急落、108.60レベルで越週
〇米指標の悪化、米当局者のハト派発言、中国の地政学リスク増大に加え、週末雇用統計の大幅悪化が背景
〇ユーロドル、スコットランド英国離脱リスク後退のからのユーロポンドの上昇に1.1985まで下落
〇その後はECBのテーパリング観測、米雇用統計の不冴え等で1.2171まで急伸、1.2165近辺で越週
〇ドル円基準線、転換線を下抜け一目均衡表の「雲」の中に突入ドル売り地合い強まる
〇ファンダメンタルズも早期テーパリング観測の後退、中国の地政学リスクの増大等ドル売り材料増える
〇来週の予想レンジ(USDJPY):107.25ー109.75、(EURUSD):1.2000−1.2250

今週のレビュー(5/3−5/7)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初109.26で寄り付いた後、早々に週間高値109.71まで上昇しました(4/13以来、約3週間ぶり高値圏)。しかし、心理的節目110.00をバックに伸び悩むと、@米経済指標の冴えない結果(米4月製造業PMI、米4月ISM製造業景況指数、米4月ADP雇用報告、米4月ISM非製造業景況指数など)や、A中国軍用機が台湾防空識別圏(ADIZ)に侵入したとの一部報道、B米3月貿易収支の赤字拡大(1992年の統計開始来最大を記録)、C米当局者のハト派的な発言(パウエルFRB議長、ボストン連銀ローゼングレン総裁、シカゴ連銀エバンズ総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁など)、D中国を巡る地政学的リスク(G7外相会合で中国などを最大の脅威と指摘する共同声明が採択されたことや、中国が中豪戦略経済対話の枠組みに基づく全活動を「無期限停止する」と発表したこと等)、E米4月雇用統計の大幅悪化(非農業部門雇用者数が前月比26.6万人増と市場予想の97.8万人増を大幅に下回った他、失業率も6.1%と市場予想の5.8%から大幅悪化)、

F上記Eを背景とした米長期金利の急低下(米早期テーパリング観測後退→米長期金利低下→ドル売り)が重石となり、週末にかけて、一時108.35(4/27以来、8営業日ぶり安値圏)まで急落しました。引けにかけて持ち直すも上値は重く、結局108.60近辺での越週となっております。尚、今週はイエレン米財務長官による「追加歳出増加の影響でインフレや金利が上昇する可能性がある」との発言(5/4)を背景に、米金利先高感再燃→米長期金利上昇→ドル高を招く一幕が見られましたが、その後本人より火消し発言が見られたことから、市場の反応は一時的なものに留まりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.2031で寄り付いた後、@ユーロポンドの下落(スコットランド民族党が過半数に届かない可能性が報じられたことで、スコットランドの英国からの離脱の是非を問う国民投票再実施リスクが後退→対ユーロで英ポンド上昇)を背景に、週央にかけて、一時1.1985(4/19以来、約2週間ぶり安値圏)まで下落しました。

しかし、一目均衡表雲上限に続落を阻まれると、A米経済指標の冴えない結果(注目された米4月雇用統計が市場予想を大幅に下回る結果)や、B米当局者のハト派的な発言、C上記ABを背景とした米長期金利の急低下、DECBによるテーパリング観測(デギンドスECB副総裁は「欧州の成人70%が夏までに新型コロナワクチン接種を受け、且つ経済が加速し始めれば、金融緩和政策の段階的解除の検討が可能」と発言、D欧州経済の回復期待(欧州委員会は新型コロナ対策として制限していた不要不急の渡航規制を来月緩和すると提言)、E欧州経済指標の良好な結果(ドイツ3月製造業新規受注、ユーロ圏3月小売売上高、ドイツ3月鉱工業生産など)が支援材料となり、週末にかけて、高値1.2171(2/26以来、約2か月半ぶり高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、結局1.2165近辺での越週となっております。

来週の見通し(5/10−5/14)

<ドル円相場>
ドル円は5/3に記録した高値109.71(4/13以来の高値)をトップに反落に転じると、週末にかけて一時108.35まで急落しました。この間、一目均衡表基準線や転換線、ボリンジャーミッドバンドや一目均衡表雲上限を下抜けした他、下位足(240分足)で売りシグナル(一目均衡表三役逆転)が点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります(3/31高値110.97と、5/3高値109.71を結んだラインが当面のレジスタンス)。

ファンダメンタルズ的に見ても、米早期テーパリング観測の後退(パウエルFRB議長は5/3の講演で「雇用の最大化を広範且つ包括的な目標とみなしている」と発言し、インフレよりも雇用を優先する構えを強調→米雇用統計の冴えない結果→米早期テーパリング観測後退→米長期金利低下→ドル売り)や、中国を巡る地政学的リスク、米国の双子の赤字など、ドル売り・円買いを意識させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方ではドル円相場の下落を来週のメインシナリオとして予想いたします(来週は5/11の米3年債入札、5/12の米4月消費者物価指数、米10年債入札、5/13の米4月生産者物価指数、米30年債入札、5/14の米4月小売売上高、米5月ミシガン大消費者信頼感指数に注目。冴えない米経済指標が確認されれば、今週同様、米長期金利低下→ドル売りの流れが一段と加速する恐れがあり要注意)。

来週の予想レンジ(USDJPY):107.25ー109.75

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は3/31に記録した安値1.1703をボトムに反発に転じると、今週末(5/7)にかけて、約2ヵ月半ぶり高値となる1.2171まで急伸しました。この間、一目均衡表基準線や転換線、200日移動平均線や90日移動平均線を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も実現するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となっております(心理的節目1.2000をクリアに上抜けたことも投資家心理の改善に寄与)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@欧州経済の回復期待や、AECBのテーパリング観測(カナダ中銀のテーパリング決定を皮切りに、ECBを含め主要国によるテーパリング議論が活発化)、B米長期金利の低下圧力(米4月雇用統計の悪化を受けて、米早期テーパリング観測後退→米長期金利低下→ドル売り)など、ユーロドルの上昇を意識させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方ではユーロドル相場の続伸を来週のメインシナリオとして予想いたします(2/25に記録した直近高値1.2243を試すシナリオを想定)。尚、来週は5/11のドイツ5月ZEW指数や、5/12のドイツ4月消費者物価指数、ユーロ圏3月鉱工業生産に注目が集まります。基本的には、欧州経済の回復期待→ユーロ買いの流れと、米早期テーパリング観測後退→ドル売りの流れの組み合わせ(ユーロ買い・ドル売り)を想定しますが、ラガルドECB総裁を含め欧州当局者がユーロ高に懸念を示す可能性もある為、要人発言のヘッドラインには注意が必要でしょう。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.2000−1.2250

注:ポイント要約は編集部

『雇用統計悪化で米テーパリング観測後退。ドル売り再燃か』

ドル円日足

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