ドル円見通し 株高背景にリスク選好でのドル安、雇用統計前の調整期
〇ドル円109円台前半での持ち合い、株高背景に為替市場全般がリスク選好的なドル売りに傾き上値重い
〇NYダウは318.19ドル高、史上最高値を2日連続で更新、一方米長期金利は変わらず
〇昨晩の米新規失業保険申請件数、昨年3月のコロナショック以降の低水準、株高要因となる
〇今晩の雇用統計、市場予想は改善の見込み、結果に対するドルの反応に注目
〇109円を割り込んでの推移中は108.50前後への下落を想定する、108.50以下は反発注意
〇米雇用統計反応からドル全面安となる場合は108.30から108.00へ下値目途を引き下げる
〇109.25超えからは強気転換注意とし、109.50超えからは109.69試しとみる
【概況】
ドル円は5月3日夕高値109.69円から3日夜安値108.88円まで急落した後は109円台前半での持ち合いで推移しているが、4日夕高値の109.48円、5日夕高値の109.47円、6日午前高値の109.42円と109.50円に届かない動きが続いたことで上値の重さが意識され、6日夜はNYダウが史上最高値を更新する中で米長期債利回りが動かなかったために為替市場全般がリスク選好的なドル売りとなり、ドル円も押されている状況だ。
5月6日のNYダウは前日比318.19ドル高と上昇して取引時間中及び終値ベースの史上最高値を2日連続で更新した。株高なら安全資産としての債券売りとなり米長期債利回りは上昇しやすい環境となるところだが、米10年債利回りは前日比変わらずの1.57%で終了、為替市場は長期債利回り上昇によるドル高懸念よりも株高によるリスク選好感を優先した投機通貨買いの様相でユーロドルが反騰するなどドル安となり、クロス円全般では円安の動きだったもののドル円においてはドル安が勝っている。
5月6日に米労働省が発表した新規失業保険申請件数は前週比9万2000件減の49万8000件で市場予想の54万件を下回った。失業保険受給者総数は前週比3万7000人増の369万人で市場予想の362万人を上回ったが、申請件数は昨年3月のコロナショック以降で最も少なかったために米国の景気回復感が強まるものとなり株高要因となった。
米労働省が発表した1-3月期の非農業部門労働生産性は年率換算で前期比5.4%上昇となり市場予想の4.3%上昇を上回った。2四半期ぶりのプラスで伸びは2020年4-6月期の11.2%上昇以来の大きさだった。前年同期比は4.1%上昇だった。インフレ指標である単位労働コストは前期比0.3%低下で予想の0.8%低下を上回り、前年同期比は1.6%上昇だった。
【テーパリングと利上げ時期の議論も意識】
英中銀は5月6日の金融政策決定会合で政策金利と量的緩和規模を現状維持としたが、週間の資産購入額を幾分減らすとした。通信社報道では現行の44億ポンドから34億ポンドに減らす意向とされる。カナダ中銀も4月会合で国債買い入れペースを縮小することを決定しており、景気回復度合いによって主要中銀によるコロナショック対策としての量的緩和政策においては縮小へ踏み込むところと当面維持してゆくところと差が出始めている。
米連銀は4月27-28日のFOMCでは政策金利及び量的緩和規模を現状維持とし、直後の会見でパウエル議長はテーパリングを議論する段階にないとした。その後もNY連銀のウィリアムズ総裁等が量的緩和縮小議論は時期尚早とするなど緩和政策の長期継続姿勢を強調しているが、イエレン米財務長官が利上げの可能性に言及するなど、徐々にテーパリングの時期について市場も意識せざるを得ない状況になっている。
米アトランタ連銀のボスティック総裁は6日に「労働省が7日に公表する4月の雇用統計が好調な内容であっても量的緩和策の縮小議論を始めるきっかけにはならない」と述べたが、ダラス連銀のカプラン総裁はFOMCでの投票権を持たないが、4月30日に続いて6日にも「FRBは早めに金融緩和縮小に関する議論を始めた方がよい」と述べており、連銀内でも量的緩和縮小論も出始めている印象を与えた。イエレン財務長官の利上げ言及も異例の発言で、その後は利上げを予想したり要請する意図はないとしたが、パウエル米連銀議長との懇意性もあって徐々に市場に対して縮小論を意識させようという動きではないかとの見方もなされている。
米雇用統計発表以降の米連銀高官による発言も今後は注目度が高まってくる。
5月7日夜の米労働省による4月雇用統計に対し、市場の事前予想では失業率は3月の6.0%から5.8%へ改善、非農業部門雇用者数も3月の91.6万人増に対して97.8万人増と高水準を維持する見込みとなっている。先行指標となる米ADPによる4月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数は前月比74万2000人増で市場予想の80万人増を若干下回ったが3月の56万5000人増から拡大している。
米雇用統計が良好さを顕著にした場合、株高債券安で米長期債利回り上昇を伴うドル高反応となるのか、米長期債利回りがさほど動かずに株高=リスク選好優先としてドル安になるのか、結果を待ちたいところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月3日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして6日午後から10日夕にかけての間への上昇を想定してきたが、3日夕高値の後は新たな高値更新へ進めずに三角持ち合いの様相となったために6日朝時点では3日深夜安値を割り込む場合は底割れによる弱気サイクル入りとして6日夜から10日深夜にかけての間への下落を想定するとした。7日早朝への下落では3日深夜安値割れにはいたっていないもののジリ安基調に入っているため、4日夕と5日夕の両高値をダブルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は6日夜から11日深夜にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあり、米雇用統計発表への反応次第では強気転換となる可能性があるが、5日夕高値109.47円を超えないうちは一段安余地ありとし、強気サイクル入りは5日夕高値超えからとする。
60分足の一目均衡表では5月6日午後からの下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は5月7日早朝への下落で30ポイント台へ低下している。60ポイント前後で抵抗にあってからの低下のため、強気転換は60ポイントに到達してその後も50ポイント以上を維持するような展開に入るところからとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.85円を下値支持線、109.50円を上値抵抗線とする。
(2)109円を割り込んでの推移中は108.50円前後への下落を想定する。108.50円以下は反発注意とするが、米雇用統計反応からドル全面安となる場合は108円台序盤(108.30円から108.00円)へ下値目途を引き下げる。また109円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.25円超えからは強気転換注意とし、109.50円超えからは上昇期入りとみて3日夕高値109.69円試しとし、高値更新からは110円台を目指す流れとみる。109.75円以上は反落注意とみるが、109.50円を超えた後も109.20円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
※4月23日からの上昇に対する3分の1押しが108.94円、半値押しが108.57円、3分の2押しが108.20円にある。
【当面の主な予定】
5月7日
未 定 (中) 4月 貿易収支・米ドル建て (3月 138.0億ドル)
未 定 (中) 4月 貿易収支・人民元建て (3月 879.8億元)
10:45 (中) 4月 財新サービス業PMI (3月 54.3、予想 54.2)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -1.6%、予想 2.2%)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -6.4%、予想 5.7%)
15:00 (独) 3月 貿易収支 (2月 181億ユーロ、予想 211億ユーロ)
15:00 (独) 3月 経常収支 (2月 188億ユーロ、予想 240億ユーロ)
19:00 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、講演
21:30 (米) 4月 非農業部門雇用者数 前月比 (3月 91.6万人、予想 97.3万人)
21:30 (米) 4月 失業率 (3月 6.0%、予想 5.8%)
21:30 (米) 4月 平均時給 前月比 (3月 -0.1%、予想 0.0%)
21:30 (米) 4月 平均時給 前年同月比 (3月 4.2%、予想 -0.4%)
23:00 (米) 3月 卸売在庫 前月比 (2月 0.6%、予想 1.4%)
23:00 (米) 3月 卸売売上高 前月比 (2月 -0.8%、予想 1.0%)
28:00 (米) 3月 消費者信用残高 前月比 (2月 275.8億ドル、予想 200.0億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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