米テーパリング観測を背景にドル高地合いが再燃か』
〇今週のドル円週明けリスク回避ムードに107.64まで下落後、週末にかけて4/13以来の109.35まで反発
〇好調な米指標、米長期金利の上昇、想定内のバイデン施政方針演説等が背景
〇FOMCはハト派姿勢堅持するもドル売りでの反応は限定的
〇ユーロドルFOMC後の米長期金利の低下に一時2ヶ月ぶり高値1.2150をつける
〇その後ECBのハト派姿勢、米長期金利の再上昇、ユーロ圏1QGDPの不冴えに週末にかけ1.2017まで急落
〇ドル円テクニカル、ファンダメンタルズともにドル買い円売りを意識させる状況継続
〇連休中の薄い市場をついたフラッシュクラッシュ要警戒
〇ユーロドルテクニカルの短期上昇トレンド終了、ファンダメンタルズも米欧格差拡大でユーロ売り圧力
〇これまでのユーロ高・ドル安見通しを改め、メインシナリオをユーロ安・ドル高に変更
〇来週の予想レンジ(USDJPY):108.00ー110.50、(EURUSD):1.1875−1.2125
今週のレビュー(4/26−4/30)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初107.89で寄り付いた後、@バイデン米大統領によるキャピタルゲイン課税提案への警戒感や、A新型コロナウイルスの感染拡大懸念、B上記@Aを背景としたリスク回避ムードの再燃が重石となり、週明け海外時間に、週間安値107.64まで下落しました。しかし、前週末金曜日に記録した安値107.47をバックに下げ渋ると、C米4月ダラス連銀製造業活動指数の力強い結果や、D米債入札(2年債入札および5年債入札)の冴えない結果(米長期金利上昇→ドル高)、E日銀による大規模金融緩和の長期化観測(日銀は金融政策の現状維持を決定すると共に、展望レポートで2021年度のコアCPI見通しを0.5%から0.1%へ下方修正。今回新たに発表された2023年度分についても1.0%に定められ、2023年4月の黒田総裁任期満了時点に於いても2.0%の政策目標に届かない見通し→金融緩和長期化観測→円売り)、
F米4月コンファレンスボード消費者信頼感指数の良好な結果(1年2ヵ月ぶり高水準。コロナ前の水準を回復)、Gサプライズなく終えたバイデン米大統領の施策方針演説(バイデン氏は「今こそ米企業や米国民の1%を占める富裕層が相応の負担をする時が来た」「中国などの国が急速に追い上げてきている」と発言するも概ね事前予想の範囲内→安堵のドル買い)、H米経済指標の力強い結果(米1四半期GDP速報値、米3月個人所得、米4月シカゴ購買部協会景気指数、米4月ミシガン大消費者信頼感指数)、Iダラス連銀カプラン総裁による「量的緩和調整について議論を始めることが適切」との発言、J短期筋のショートカバーが支援材料となり、週末にかけて、4/13以来となる高値109.35まで反発し、そのまま高値圏での越週となっております。
尚、注目された米FOMCでは、金融政策の現状維持(政策金利の据え置きと債券購入プログラムの月額購入額の維持)が全会一致で決定されると共に、パウエルFRB議長からも「経済は雇用・インフレの目標から程遠い」「緩和の段階的縮小の議論開始は時期尚早」との従来通りのハト派的な発言が見られましたが、市場の反応(ドル売りでの反応)は限定的となりました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.2090で寄り付いた後、@欧州圏における新型コロナウイルスの感染拡大状況の落ち着きや、Aドイツ政府による2021年経済成長率見通しの上方修正(3.0%→3.5%)、BラガルドECB総裁による欧州経済に対する前向きな発言(コロナウイルスのワクチン接種が進めば、ユーロ圏経済は今年下半期に大きく成長する)、CパウエルFRB議長によるFOMC後の記者会見でのハト派的な発言(米長期金利低下→ドル売り)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.2150(2/26以来、約2ヵ月ぶり高値圏)まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、DECBによる根強い金融緩和の長期化観測(パネッタECB専務理事は物価上昇率が2%に戻るまで積極的な金融緩和政策を縮小すべきでないと発言)や、E米経済指標の力強い結果、Fダラス連銀カプラン総裁による「量的緩和の調整について議論を始めることが適切」との発言、G上記EFを背景とした米長期金利の上昇、Hユーロ圏第1四半期GDPの冴えない結果(2四半期連続のマイナスでリセッション入り)が重石となり、週末にかけて、安値1.2017まで急落し、そのまま安値圏での越週となっております。
来週の見通し(5/3−5/7)
<ドル円相場>
ドル円は4/23に記録した安値107.47をボトムに反発に転じると、今週末にかけて一時109.35まで急伸しました(4/13以来の高値圏)。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線を上抜けするなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となりつつあります(心理的節目110.00突破が射程圏内)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@根強い米早期テーパリング観測(パウエル氏は「テーパリング議論は時期尚早」と否定するも、ダラス連銀カプラン総裁は「量的緩和の調整について議論を始めることが適切」と発言。市場では6月FOMCのドットチャートや、8月後半に予定されているジャクソンホールでテーパリング開始を織り込む展開)、A米経済指標の力強い結果(今週発表された米経済指標は軒並み力強い結果)、B新型コロナウイルスの終息観測、C米長期金利の上昇圧力、D日米金融政策格差(日銀による金融緩和の長期化観測)など、ドル買い・円売りを意識させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方ではこれまでのドル安・円高見通しを改め、メインシナリオをドル高・円安に変更いたします。尚、来週は5/3の米4月ISM製造業景気指数、5/5の米4月ADP雇用統計、米4月ISM非製造業景気指数、5/7の米4月雇用統計に注目が集まります。今週同様、米経済の力強い回復が示されれば、早期テーパリング観測再燃→米長期金利上昇→ドル高の波及経路が意識されます。但し、米長期金利上昇・米ドル高は米主要株価指数や商品市況の下押しを通じて、クロス円下落→ドル円連れ安に時間差で波及する効果もあることから、一巡後の反落リスクには念のため注意が必要でしょう。また、来週は本邦大型連休期間中でアジア時間の需給が細ることから、流動性の薄さの隙をついたフラッシュクラッシュ(ボラティリティ急拡大)にも警戒が必要です。
来週の予想レンジ(USDJPY):108.00ー110.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は今週後半にかけて一時1.2150まで上昇しましたが、週末にかけて1.2017まで反落する動きとなりました。一目均衡表転換線や90日移動平均線を下抜けしたこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、短期上昇トレンドの終焉を感じさせるチャート形状となっております(来週は心理的節目1.2000や、一目均衡表雲上限1.2020、同下限1.1939を維持できるか否かに注目→下抜ければ、投資家心理の悪化を通じて、ユーロ売りが強まる可能性あり)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、@欧米経済格差(力強い米経済指標とは対照的に低調な数字が続く欧州経済指標)や、A欧米金融政策格差(テーパリング期待が強まる米国と、金融緩和の長期化観測が根強い欧州)、B新型コロナウイルスの感染拡大に伴う欧州主要国のロックダウン長期化懸念(ドイツやフランス)、Cイタリア政治の先行き不透明感(解散総選挙リスク)など、ユーロ売り・ドル買いを意識させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方ではこれまでのユーロ高・ドル安見通しを改め、メインシナリオをユーロ安・ドル高に変更いたします(尚、来週は5/5のユーロ圏3月生産者物価指数、5/6のユーロ圏3月小売売上高、5/7のラガルドECB総裁発言の他、米4月雇用統計などの米経済指標にも注目。欧米経済格差が示されれば、今週末同様、ユーロ売り・ドル高に波及する恐れあり)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1875−1.2125
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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