ドル円見通し 米FOMC、米GDP速報から乱高下するも4月23日からの反騰継続
〇FOMCの政策金利等現状維持、テーパリングは時期尚早としたことで、ドル円4/29午前108.42まで反落
〇米GDP速報が市場予想を上回ったことで米長期債利回りが一段と上昇、4/29夜109.21円まで一段高
〇米10年債利回り、景気回復期待とインフレ進行見込みで、一時1.68%まで上昇、下げ渋りから抜け出す
〇ドル円、4/23からの上昇基調を継続してゆく印象を強める
〇NYダウ239.98ドル高、S&P500は史上最高値を更新、株高基調は継続
〇FOMC会見にてパウエル議長、市場が「やや泡立った状況」と言及
〇109.21超えから109.50-109.85を目指すとみる、109円以上の推移ならば週明けも高値試しか
〇108.42割れからはいったん仕切り直しの下落として、108円前後へ向かうとみる。
【概況】
ドル円は4月23日夜安値107.46円で3月31日高値110.96円以降の安値を更新したが、その後は下げ渋り、26日深夜の上昇で23日深夜の戻り高値を上抜いて戻り高値切り下がりパターンから抜け出した。29日未明のFOMCを控えて米長期債利回りが再上昇したことで28日夕刻には109.07円まで上昇したが、FOMCが政策金利と量的緩和規模を現状維持としてテーパリング=量的緩和縮小開始の議論は時期尚早と否定したことで米長期債利回りがいったん低下しドル円も29日午前安値108.42円まで反落した。しかし29日は米長期債利回りが午前から上昇再開に入り、29日夜の米GDP速報が市場予想を上回ったことで米長期債利回りが一段と上昇し、ドル円も28日夕高値を超えて109.21円まで一段高となった。深夜からは米長期債利回り上昇一服と利益確定売りに押されて109円を割り込んだが、4月23日からの上昇基調を継続してゆく印象を強める動きとなっている。
米商務省が発表した1-3月期のGDP速報値は年率換算で前期比6.4%増となり10-12月の4.3%から大幅に加速した。プラス成長は3四半期連続だが、4-6月期も高成長が見込まれており、昨年春のコロナ危機直前の水準をほぼ回復した印象が強まった。GDPの7割を占める個人消費は10.7%増で前期の2.3%増から大きく伸びた。設備投資は9.9%増(同13.1%増)、住宅投資は10.8%増(同36.6%増)と急増した前期からは鈍化したものの高水準を維持している。
米労働省が発表した新規失業保険申請は4月24日までの週間で前週比1万3000件減少の55万3000件となり市場予想の54万9000件を上回ったが低水準を維持している。4月17日までの失業保険受給者総数は366万人で前週から9000人増となり市場予想の361万4000人を上回ったが、最近の低水準を維持している。
【株高債券安・利回り上昇でドル円も上昇】
米10年債利回りは3月30日に1.77%台へ上昇、昨年8月時点の0.50%から大きく切り上げている。特に1月から上昇が加速したことでドル円は1月6日安値を底に反騰入りしてきたが3月30日の米10年債利回りのピークアウトをもっていったん調整安に入った。米10年債利回りは4月15日に1.52%台まで低下したが、その後は新たな水準切り下げへ進まずに概ね1.60%までの水準での下げ渋り状態で推移していたが、4月22日の1.53%を押し目に反騰入りしてきた。FOMC後にいったん低下したものの米GDP速報値が予想を超えたことでの株高債券安、景気回復期待とインフレ進行見込みから反騰に転じて29日には一時1.68%まで上昇して下げ渋り状態から抜け出してきた。ドル円はこの動きに合わせて29日午前への下落で押し目を形成してから一段高へ進んでいる。このことはドル円にとっては引き続き米長期債利回り動向を主要テーマとし、長期債利回り上昇ならドル円は上昇基調で進むとの姿勢を示したといえる。
NYダウは4月28日に前日比164.55ドル安と下落したが、29日は239.98ドル高と上昇した。S&P500種指数は29日に史上最高値を更新している。株高基調は継続であり、株買い・債券売りの流れも続きやすくなった。
【FOMCはテーパリングに当面は動かず】
米FOMCは市場予想通りに政策金利の年0〜0.25%、量的緩和による米国債などの資産購入規模の現行月額1200億ドルを現状維持とした。パウエル議長は29日未明の会見で、「雇用とインフレの目標からは程遠い」「今は量的緩和の縮小を議論する時ではない」としてテーパリングはまだかなり先という見方を強調した。FOMCは市場からの資金吸収手段である翌日物リバースレポ金利も0.0%に据え置き、超過準備預金の付利(IOER)も0.1%で据え置いた。一部では付利が引き上げられる可能性も出ていたが、「資金市場の状況は良好」「現段階で新たな措置は必要ない」とした。
パウエル議長は会見で「資本市場ではやや泡立った状況(Frothy)がみられる」と述べた。フロスとはバブルではないとしつつもバブル発生への警戒感を示すものとされ、第13代FRB議長のグリーンスパン氏が2005年7月の議会公聴会で住宅市場のバブル化についての質問に答えて「一部の地域で泡粒の兆候(signs of froth)が見られる」と答えたのが最初とされる。その後にNYダウは史上最高値を更新してゆき3年後の2008年にリーマンショックが発生している。フロスはバブルとなって破裂したが、悲観論者はそろそろバブルの警戒と受け止めるだろうが、楽観論者はバブル破裂はまだ先と強気な姿勢を継続しやすくなった。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月23日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして23日夜から27日夜にかけての間への上昇を想定し、直前の下落期間が長引いた後に上昇基調へ転じる場合は当初のサイクルトップ形成期が伸びることも多いとした。28日朝時点では高値形成期を28日の日中から30日深夜にかけての間へ延長した。
28日夕へ高値を切り上げてから29日午前へ反落し、その後の反騰で高値を更新しているので、23日夜安値から3日半となる29日午前安値を直近のサイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとする。トップ形成期は5月3日午後から5日夕にかけての間とし、弱気転換は29日午前安値割れからとする。
60分足の一目均衡表では29日午前への下落時に遅行スパンが悪化したがその後の反騰で好転している。29日午前への下落では先行スパンに潜り込んだがその後の反騰で上抜き返している。このため先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とし、弱気転換は両スパン揃って悪化するところからとする。
60分足の相対力指数は29日午前への下落時に30ポイント台へ低下したがその後の反騰で70ポイント手前へ戻した。28日夕高値から29日夜高値への一段高に際しては指数のピークが切り下がっているので弱気逆行の気配はあるが、50ポイント台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、65ポイント超えからは弱気逆行ラインをブレイクするために一段高へ進みやすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4月29日午前安値108.42円を下値支持線、29日夜高値109.21円を上値抵抗線とする。
(2)108.70円以上での推移か一時的に割り込んでも切り返すうちは29日夜高値超えから109円台中後半(109.50円から109.85円)を目指すとみる。109円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かうとみる。
(3)108.50円前後は押し目買いから反発しやすいとみるが、108.42円割れからはいったん仕切り直しの下落として108円前後へ向かうとみる。108.42円を割り込んだ後も108.50円以下での推移なら週明けは調整模索へ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
4/30(金)
10:00 (中) 4月 国家統計局・製造業PMI (3月 51.9、予想 51.7)
10:30 (豪) 1-3月期 生産者物価 前期比 (10-12月 0.5%)
10:30 (豪) 1-3月期 生産者物価 前年同期比 (10-12月 -0.1%)
10:45 (中) 4月 財新製造業PMI (3月 50.6、予想 50.8)
14:00 (日) 3月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (2月 -3.7%、予想 -7.4%)
14:00 (日) 4月 消費者態度指数・一般世帯 (3月 36.1、予想 34.2)
14:30 (仏) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 -1.4%、予想 -0.1%)
17:00 (独) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 0.3%、予想 -1.5%)
17:00 (独) 1-3月期 GDP速報値・季調済 前年同期比 (10-12月 -3.7%、予想 -3.2%)
17:00 (独) 1-3月期 GDP速報値・季調前 前年同期比 (10-12月 -2.7%、予想 -3.6%)
18:00 (欧) 3月 失業率 (2月 8.3%、予想 8.3%)
18:00 (欧) 4月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (3月 1.3%、予想 1.6%)
18:00 (欧) 4月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (3月 0.9%、予想 0.8%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 -0.7%、予想 -0.8%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比 (10-12月 -4.9%、予想 -2.0%)
21:30 (米) 1-3月期 雇用コスト指数 前期比 (10-12月 0.7%、予想 0.7%)
21:30 (米) 3月 個人所得 前月比 (2月 -7.1%、予想 20.0%)
21:30 (米) 3月 個人消費支出(PCE) 前月比 (2月 -1.0%、予想 4.2%)
21:30 (米) 3月 PCEデフレーター 前年同月比 (2月 1.6%、予想 2.3%)
21:30 (米) 3月 PCEコア・デフレーター 前月比 (2月 0.1%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (2月 1.4%、予想 1.8%)
22:45 (米) 4月 シカゴ購買部協会景況指数 (3月 66.3、予想 65.3)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (3月 86.5、予想 87.4)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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